被害者はまるで神かくしにでもあったように、突然姿を消し、二、三日後には野ざらしの死体となって発見されるのが普通だったが、時には警備隊の宿舎の中で犯行が演じられるというほどの不祥事さえも起こったのだ。
ただ、どの場合でも、ふしぎな一致点というのは、死体の首がどこかに持ち去られて発見されず、そのかわりに、羊の首が死体とともに発見されるという奇怪な事実だったのである。
「種々の報告から総合して、この兇行は一人の狂人のしわざとは考えられない。いや、それどころか、厳正な組織を持った秘密結社の犯行ではないかとわれわれはにらんでいる。この仮想団体を「羊の首」と称するが」
赤松大佐は重々しい口調でつづけた。
高木彬光の怪奇小説集「吸血の祭典」からの一編、「ホチムの魔王」です。昭和11年、関東軍の特務機関に配属された若き大尉に命じられた任務とは!?
こちらの情報は、カーター卿さんからいただきました。ありがとうございますー。