山海経のひつじのようなもの

ひつじ話

土螻
獣がいる、その状は羊の如くで四つの角、名は土螻、これは人を食う。

怪力乱神を語りまくった古代中国の地理書「山海経」には、羊のような生き物の存在が数多く記されています。まずは一頭、「西山経」に出てくる「土螻」をご紹介。「四つの角」というのがマンクスロフタンやジェイコブぽくてかわいいような気がします。人食いますけど。
ちなみに、ジェイコブ種はこんなかんじの羊。必ずしも多角ではないらしいですが。

ジェイコブ種

記事を読む   山海経のひつじのようなもの

世にも不思議な食の世界

ひつじ話

「世にも不思議な食の世界」  羊の丸焼き
これもそれも実は炭火と羊の焙り方ひとつなんです。「強火の遠火」で面倒くさがらずに肉塊を回転させながらじっくりと焼き上げる。これなんですねぇ。

わが胃袋に「未消化」という文字はない(帯の惹句より)小泉武夫の怪食紀行です。これはウイグルの羊の丸焼きですが・・・コツを教えられても・・・・。

記事を読む   世にも不思議な食の世界

ドナテッロの「ダヴィデ」

ひつじ話

ドナテッロのダヴィデ像(頭部)
「しもべは父の羊を飼っていたのですが、しし、あるいはくまがきて、群れの子羊を取った時、わたしはそのあとを追って、これを撃ち、子羊をその口から救いだしました。」 (中略) ダビデは、いくさ衣の上に、つるぎを帯びて行こうとしたが、できなかった。それに慣れていなかったからである。そこでダビデはサウルに言った、「わたしはこれらのものを着けていくことはできません。慣れていないからです」。ダビデはそれらを脱ぎすて、手につえをとり、谷間からなめらかな石五個を選びとって自分の持っている羊飼の袋に入れ、手に石投げを執って、あのペリシテびとに近づいた。

 旧約聖書サムエル記上第17章 

フィレンツェはバルジェッロ美術館にある、ドナテッロのダヴィデ像です。たぶん、世界一有名で最強の羊飼いだと思うんですが、どうでしょう。

記事を読む   ドナテッロの「ダヴィデ」

国語辞典で羊を引いてみると?

ひつじ話

・ひつじ【羊】
(ヒは「ひげ」、ツは「の」、ジは「うし」の意という)ウシ科の哺乳類。8000年以上前からの家畜。毛は灰白色、柔らかくて巻き縮む。角はないものもある。性質は臆病で常に群棲。毛は毛織物の原料。肉は食用、脂・皮も用途が多い。世界各地、殊にオーストラリア・アフリカ・南北アメリカなどで多数飼われ、メリノ種を始め千種以上の品種がある。緬羊(めんよう)。羅紗綿(らしやめん)。〈和名抄(18)〉
・よう【羊】 ヤウ
ひつじ。「牧羊・羊毛・羊頭狗肉」
広辞苑 第五版 (C)1998,2004 株式会社岩波書店

広辞苑 第五版 for ATOKを購入したので引いてみました。
ひげのうし……というんですね。なんかそういう名前のジンギスカン屋もあるとのことで。
ぱっと聞くと語源的に無理がある気もするんですがどうなんでしょう。

・ひつじ【羊】
山羊に似た、中形のおとなしい家畜。らせん形の角が有る。毛は灰白色、柔軟で縮れ、毛織物の原料。肉は食用。綿羊。[ウシ科]
かぞえ方:一匹・一頭
・ひつじかい【羊飼い】
朝、羊を小屋から出して草を食べさせに野原に連れ出し、夕方小屋に帰すことを職業とする人。
新明解国語辞典 第四版 (C) 株式会社三省堂

ついでに手元の新解さんでも。
なんで羊飼いの記述だけ具体的なんでしょうか。

・ ひつじ【羊】
偶蹄(ぐうてい)目ウシ科ヒツジ属などの哺乳類の総称。中形で、毛は柔らかく、角は大きくて渦巻き状。主に地上の草をかみ切って食べ、群れで暮らす。地中海沿岸から中央アジア、北アメリカ西部の山岳地帯に分布し、ムフロン・アルガリ・ビッグホーンなどが含まれる。家畜化の歴史は古く、西アジアで主にムフロンより馴化(じゆんか)・改良された。羊毛用のほか毛皮用・肉用もあり、乳・脂肪も利用され、品種にはコリデール・メリノ・寒羊(かんよう)などがある。緬羊(めんよう)。

大辞泉(小学館) Yahoo辞書

……なぜ品種例にコリデール・メリノときて三つめが寒羊なのか知りたいところです。

記事を読む   国語辞典で羊を引いてみると?

伊曾保物語

ひつじ話

伊曾保物語
1593年の天草本『イソポのハプラス』で初めて日本に紹介されたイソップは,江戸初期以来,各種の『伊曾保物語』の出版により広く日本中に普及した.誰もが親しんだ『イソップ寓話集』を,江戸時代の人々と同様に,やさしい文語体の古文で読み,浮世絵師描くところの挿絵とともに味わう1冊.

羊がたくさん出てくるイソップ物語ですが、ごく早い時期に日本に紹介されています。生きた羊を見たことがない江戸期の日本人が意外と羊のことを知っていたらしいのは、こういうもののおかげもあるのかも。

記事を読む   伊曾保物語

スルバラン 「神の仔羊」

ひつじ話

 スルバラン「神の仔羊」 

プラド美術館蔵、フランシスコ・デ・スルバランの「神の仔羊」です。前にご紹介したムリーリョとほぼ同時代。こちらもまた、キリストを表現するもののようです。

記事を読む   スルバラン 「神の仔羊」

モンゴルのことわざ

ひつじ話

「ヒツジのある人には、食がある  タンスのある人には、光がある」
タンスと対にされていることによって、ヒツジの財産としてのイメージがより明瞭になっている。
「ヒツジもかわいそう  オオカミもかわいそう」
双方に同情するのはばかげている。あるいはまた、よほどの博愛主義というものであろう。どちらもかわいそうだなどというような偽善的な態度に対して、嫌悪感をあらわしたことわざである。
「あすの脂肪より  きょうの肺」
ヒツジの脂肪片は、主人が賓客に手ずからさしだしてそのまま客に飲み込ませることもあるほど最高級の部位である。 (中略) 日本でならさしずめ「あすの百よりきょうの五十」といい、「さきの千両よりいまの十両」という。

モンゴルのことわざを通じてその精神的風土を探る、という内容の本から3つを。思ったよりは近いような、それでもやっぱり遠いような。

記事を読む   モンゴルのことわざ

「イソップ寓話集」の羊たち

ひつじ話

狼と仔羊
仔羊が川で水を飲んでいるのを狼が見つけ、もっともらしい口実を設けて食べてやろうと思った。
そこで川上に立つと、お前は水を濁らせ、俺が飲めなくしている、と仔羊に言いがかりをつけた。
仔羊が、ほんの唇の先で飲んでいるだけだし、それでなくても、川下にいて上流の水を濁すことはできない、と言うと、この口実が空を切った狼は、「しかしお前は、去年俺の親父に悪態をついたぞ」と言った。
一年前はまだ生まれていなかった、と仔羊が言うと、狼の言うには、「お前がどんなに言い訳上手でも、俺としては食べないわけにはいかないのだ」
悪事を働くことが決まっている人の所では正当な弁明も無力である、ということをこの話は説き明かしている。
毛を刈られる羊
下手な刈り方をされる羊が、刈り手に向かって言うには、「毛を刈るのなら、もっと浅く切りなさい。肉が欲しいのなら、ひと思いにばっさり殺って、少しずつ苦しめるのは止めておくれ」
技術の扱いの下手な連中に、この話はぴったりだ。

妙な羊や羊飼いや狼が大勢いるイソップ寓話世界から二話。
以前ご紹介した河鍋暁斎の戯画の元ネタもありましたので、下に。羊ならぬ仔山羊ですが。

屋根の上の仔山羊と狼
仔山羊が屋根の上に登って、通りがかりの狼に悪態をついた。
それに対して狼が言うには、「悪態をついているのはお前ではなく、その場所だ」
時宜を得れば、強者を見下す勇気を与えられる、ということをこの話は説き明かしている。

記事を読む   「イソップ寓話集」の羊たち

「イソップ寓話集」より「羊の皮を着た狼」

ひつじ話

人の褌で相撲をとるのは危険である。
ある時狼が、たらふく餌にありつくためには、姿から入って本性を変えるのがよいと考え、羊の皮を被ると、まんまと羊飼も欺いて、羊の群れにまじって草を食んでいた。
しかし夜になると、狼も羊小屋に一緒に押しこめられ、入口には柵がはめられ、小屋まわりがすっかり固められた。
羊飼は晩飯にしたいと思い、包丁で狼を殺した。
このように、借り物の衣装でふるまう者は命を失うことがよくあるし、それが大惨事の遠因にもなるのだ。

 「羊の皮を着た狼」って、こんな話だったんですね・・・・・。

記事を読む   「イソップ寓話集 ...

天空の草原のナンサ

ひつじ話

「天空の草原のナンサ」

モンゴルの草原を舞台にした、少女と犬の愛おしい物語です。もちろん羊もいます。

記事を読む   天空の草原のナンサ

インパン墓地出土の四脚台及び食材

ひつじ話

四脚台及び食材
短い4脚を備えた長方形の台の上に、頭や骨付きの羊肉が置かれている。インパン(営盤)墓地ではほとんどの墓に副葬品としてこのような食材が納められており、中には串に指した肉などもあった。当時の人々の正餐もしくは儀礼用の食材を墓に供えたものと考えられる。腐敗しやすい食材でありながら、驚くほど良好に保存されていたのは、乾燥地帯という気候風土ならではの現象である。

インパン墓地があるのは、天山南路、楼蘭の西あたりです。そしてこの出土品は2?5世紀のもの。千数百年前の羊の肉が、ここに。

記事を読む   インパン墓地出土の四脚台及び食材

ムリーリョの「善き羊飼い」

ひつじ話

ムリーリョ 「善き羊飼い」

プラド美術館にある、バルトロメ・エステバン・ムリーリョの「善き羊飼い」です。善き羊飼い、つまりキリストが、愛らしい幼児として描かれているのが特徴。

記事を読む   ムリーリョの「善き羊飼い」

岡山市出土の羊形硯

ひつじ話

ハガ遺跡の羊形硯
この羊形硯(ようけいけん)は頭の部分のみの破片ですが、羊ををかたどった焼き物の硯です。全国でほかに奈良県・平城京跡の2例、三重県・斎宮跡、愛知県白鳥遺跡、京都府樋ノ口遺跡の5例しか知られておらず、国府などの国の役所などの関連遺跡から出土すると言われています。

昨日に続いて、羊形硯です。こちらは岡山市のハガ遺跡で出土したもの。

記事を読む   岡山市出土の羊形硯

羊形硯

ひつじ話

羊型硯
奈良時代の中頃のものとみられる須恵器質の硯で、頭部だけが出土したものである。丸く飛び出した目に、大きく後ろへ巻いた角、線で表現した羊毛がユニークである。 (中略) 背の部分が硯面であったと推定され、平城京の復元例や中国の青磁羊形燭台などの造形を参考に復元した。

硯のデザインになぜ羊、という謎については、これは羊ではなく羊似の水妖である、という説があるようです。 → 同じく斎宮歴史博物館より、斎宮百話第7話「羊は羊?」を。
こちらの「羊は羊?」に出てくる雨工のお話は、田中貢太郎の「柳毅伝」で読むことができます。 → 青空文庫 より 「柳毅伝」

記事を読む   羊形硯

PAGE TOP