W.H.デイヴィス 「羊」

ひつじ話

 ヰリアム・エーィチ・デーヴィス
昔、私がボルティモーアに居たとき、
ひとりの男がやつてきて叫んだ、
「来ないか、わしらは千八百頭の羊を載せて火曜日に出帆するんだが。」
「若いの、おまへが一緒に来て呉れりや五十シリングやるぜ。
千八百頭の羊をボルティモーアから
グラスゴウの町まで届けるんだ。」
かれは私に五十シリング呉れた、
私は千八百頭の羊をつれて出帆した、
船は間もなく港の口を離れ
深い大海へと乗りだした。
海の第一夜には
羊はこゝろ静かにしてゐた。
二晩目になると、かれらは恐れて啼いた、─
風の中に草の匂いがしないので。
可哀さうに、かれらは緑の野原を鼻で慕ひ
私が眠られぬほど高く啼きつゞけた、
五万シリング呉れよとまゝよ、
二度と羊と船出はせまい。

西條八十の訳詩集「白孔雀」より、ウィリアム・ヘンリー・デイヴィスの「羊」(原題「Sheep」)を。

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ハリスツイードのぬいぐるみ。

ひつじグッズ

この数年、高級毛織物ハリスツイードを使った雑貨品をよく見かけるようになりました。
かわいいなぁ、小さいものをひとつ欲しいなぁと思いながら、ハリスツイードアイテムを並べた雑貨店などをうろうろさまよっておりましたら、こんなものと目が合ってしまいました。
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雑貨ブランド「ヘミングス」のぬいぐるみです。お腹にツイードが巻かれてるのが、じつにラブリー。

その外見と性質から、優しさ・純粋さの象徴とされるヒツジは、
ハリスツィードの原料の羊毛にちなんだアイコンです。
ヘミングス公式HP 内 Harris Tweed ハリスツイード ZOO(SHEEP)

複数並んでいたのですが、どの子も少しづつ表情が違ってました。さんざん悩んだすえに、この子を購入。
どこかでお目に止まることがあれば、ぜひ。

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ビッグホーンが家畜にならなかった理由。

ひつじ話

「家畜化の候補となりうる」陸生の大型草食動物は148種類である。
しかし、人類の歴史を通じて、実際に家畜化されたのは、この148種類のうちの14種だけである。
残りの134種は、どうして家畜化されなかったのか。
(略)
序列性のある集団を形成しない問題
実際に家畜化された大型哺乳類は、どの種類も、つぎの三つの社会性を共有している
─群れをつくって集団で暮らす。集団内の個体の序列がはっきりしている。群れごとのなわばりを持たず、複数の群れが生活環境を一部重複しながら共有している。
(略)
ほとんどのシカやレイヨウのように群れをつくって暮らす動物の多くは、はっきりした序列を集団内で持っておらず、リーダーを本能的に刷りこみ記憶する習性がない(したがって、人間を群れのリーダーとして刷りこみ記憶するようなこともない)。
シカやレイヨウを飼いならすことはできるが、羊の群れのように飼いならされたシカやレイヨウの群れを見たことがある人はいない。
まったく同じ理由で、現在の羊の祖先にあたる中央アジアのムフロンと同属の北米産のビッグホーンも家畜化されていない。
ビッグホーンは、ムフロンと同様、家畜にはうってつけの条件をひとつだけ除いてすべて備えている。
ビッグホーンは、ムフロンとちがい、自分より序列が上と認識したメンバーに服従するという習性を、種全体として持っていないのである。

先日、横浜市立金沢動物園に行ってから、家畜化された原種とオオツノヒツジ(ビッグホーン)のような種とはなにが違ったのだろうとぼんやり考えていたのですが、『銃・病原菌・鉄』の中の一章「なぜシマウマは家畜にならなかったのか」に、ものすごくわかりやすい説明がありました。そ……そこまで明快な理由なんですか?

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JINSの安眠対策メガネ 「NIGHT USE」

ひつじ画像・映像

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JINS SCREEN NIGHT USE
寝る前スマホのお供に。安眠対策メガネ。

眼鏡屋さんのJINSの前を通ったら、お疲れ顔で羊に囲まれる女性の写真と目が合ってしまいました。
なにごとかと思ったら、12月3日より発売されるブルーライトカットメガネの新ラインアップ「NIGHT USE」の広告とのこと。スマホのブルーライトが気になる向きには、ぜひ。

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ヴァリニャーノ 「日本巡察記」

ひつじ話

国土は、ある地方では彼等の主食である米を産し、また麦もとれるが、他の地方は不毛の山岳地帯となっている。
(略)
牧畜も行われず、土地を利用するなんらの産業もなく、彼等の生活を保つ僅かの米があるのみである。
(略)
彼等の食物と調理法については、材料の点でも、味の点でも、まったくヨーロッパのものと類似するところがない。
結局、彼等の食物に慣れるまでは多くの努力と苦痛を経なければならぬ。

オールコック「大君の都」「サムライ洋食事始」の、幕末の食文化を巡るあれこれに関連して、もう少し。
もっと昔に日本にやってきた西洋人もなにか言っているのではないかと、イエズス会宣教師アレッサンドロ・ヴァリニャーノの「日本巡察記」を開いてみました。
牧畜が行われていないというのは、特記するようなことなんですね、やっぱり。

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江戸期における羽織の歴史。

ひつじ話

1616年、日本に羊毛製品を持ち込んだ英国商館員の本国への報告にあるように
「日本人は、黒、赤などの原色を好み」中間色の毛織物はほとんど売れなかった。
従来の衣生活にはなかった黒と猩々緋の染色のものが、舶来好みとして強烈に志向されたのであった。
少し時代が下がると、羽織に袖がついてくるようになった。広い短い袖である。
袖のついた羽織─つまり陣羽織は、いずれも舶来の毛織物や天鵞絨地である。主体は羅紗である。
上の者が豪華に装えば、下の者もこれに倣って豪奢の風を追う。
羅紗の羽織は一般武士も着用するようになっていった。
一見、陣羽織風ではあるが、豪華な「縫取り」模様はなくなって、やがて無地に近くなり、代わりに、背中に大きな家紋がつけられた。
(略)
羽織は道中の服であり旅行用のものであったが、広く一般に重宝がられて普及すると、道中だけでなく、室内の座敷着として、これをつけて客人と応対するようになり、江戸末期になると、これに袴を加えて一対となして、それを「羽織袴」と称するようになった。
高貴の人や主君の前では羽織は着用しなかったが、それ以外の一般の場合には、これが正装となり、また礼服となった。
布地としては、いろいろ使われたようだが、羊毛加工品は依然として衰えていなかった。

緋羅紗地丸紋付陣羽織白羊毛皮付き羽織、はたまた司馬遼太郎の「胡蝶の夢」などで、江戸期に普及した羊毛の羽織のお話をしているのですが、「羊毛の語る日本史」にわかりやすい解説がありましたのでご紹介です。

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ヴィクトリア朝英国の羊肉料理。

ひつじ話

さて、《名馬シルヴァー・ブレイズ》事件のテーマのひとつは事件当日の月曜日の夕食に登場した、「(アヘン入り)マトンのカレー料理 ”curried mutton”」です。
調教厩舎のあるキングズ・パイランドでは羊を飼育しているので、調教師のストレイカー宅では日曜日のディナーのメイン料理は「ロースト・マトン」であることも多いでしょう。
(略)
必ずローストした残りの肉がある月曜日に、夫のストレイカーはアヘンの味を隠すために「マトンのカレー料理」をリクエストしたのでしょう。
(略)
『ビートン夫人の家政読本』に載っている「マトンのカレー料理」の材料と作り方は、
材料: 冷肉の残り物のマトン、玉ねぎ2個、パター0.25ポンド、カレーパウダーと小麦粉を各デザートスプーン1、塩、スープ1パイント
作り方: スライスした玉ねぎをバターで炒め茶色になったら小さく切ったマトンを入れる。この中にスープをいれてカレーパウダー、小麦粉そして塩を入れてできあがり。

「サムライ洋食事始」「大君の都」をご紹介したところで、さて、ではオールコックがそこまで焦がれた羊肉料理とはなんだったんろうと、「ヴィクトリア朝英国の食卓と生活」を繰ってみましたら、
以前ご紹介したシャーロック・ホームズシリーズの一作「白銀号事件」に出てくるマトンのカレー料理について、一章がさかれていました。ちょっと美味しそうです。

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ニザーミー・アル=アルーズィー 「四つの講話」

ひつじ話

イスマーイールの卒中の治療
マリク・シャーの治世とサンジャルの治世の一部分にかけて、ヘラートにアディーブ・イスマーイールという哲学者がいた。
彼はきわめて優れ、学識がある完全な男であったが、生計を医師としての収入で立てていた。
彼はいくたの珍しい治療を行った。
ある時、彼が屠殺市場を通りかかると、ある屠殺人が、羊の皮を剥ぎ、時どき羊の腹に手を入れ、温かい脂肪を取り出して食べていた。
イスマーイールはこの様子を見て、向かい側にあった八百屋にむかい、
「もしあの肉屋が死んだら、埋葬する前に私に知らせてくれ」と言うと、八百屋は「承知しました」と答えた。
(略)
その時八百屋はイスマーイールが言ったことをふと思い出し、駆けて行って彼に知らせた。
するとイスマーイールは、「死ぬのがおそすぎるぐらいだ」と言って、
杖をとり、その家に行き、死人の顔から布をとり、
(脈を手にとり、「杖で死人の足の裏をたたけ」と命じ、しばらくして「もう十分だ」と言った)。
それから彼は卒中の治療にとりかかった。

12世紀のペルシア散文文学「四つの講話」から、医師に関わる逸話を。
温かい脂肪……たしかに体に悪そうです。

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幕末と西洋料理。

ひつじ話

開国前夜の西洋料理─ペリー主催の饗宴
アメリカ側全権の東インド艦隊司令長官マシュー・C・ペリーは日米和親条約の調印日を前にした2月29日、自分たちの主張がほぼ盛り込まれる見込みがついたとして、ポーハタン号に日本側の関係者を招いて大饗宴を催した。
(略)
コックは甲板で飼育されてきた牛、羊、鶏をはじめ、ハムなどの貯蔵肉、魚、野菜、果物などを惜しみなく使って極上の料理を用意した。
(略)
ただしどれだけの日本人が味わいながら食べていたのかは疑問である。
現にアメリカ人記者も日本人が積極的に料理を口にしたのは、旨いからというより、物珍しさや好奇心によるものと見ており、その証拠に日本人たちがテーブルに運ばれてくる料理や果物などについて一つずつ、その名前を知りたがり、全部味見をしたことからも明らかだとしている。
太平洋を渡った170名
和親条約に続き、通商条約の交渉が始まり、それが締結された後に初めて幕府の使節団が海を渡ったのである。
(略)
艦内での食事は朝8時と午後2時の2回と決められていた。
医師の村山伯元(31歳)は出港直後の食事内容を次のように記している。
「1月19日、羊肉・雉子、ジャガタラ芋煮つけ、米国の酒、飯は邦米なり、茶は砂糖を入、味殊によし」(『奉使日録』)
その後の使節団
徳川昭武が兄の将軍・慶喜の名代としてパリ万博開会式に出席するため、随員28名を伴い、横浜を発ったのは慶応3年1月11日である。
(略)
随行した渋沢篤太夫(のちの栄一)が食事内容を細かく書き留めている。
(略)
「同10時頃にいたり、朝餐を食せしむ。器械すべて陶皿へ銀匙、並銀鉾、包丁等を添へ、菓子、蜜柑、葡萄、梨子、枇杷、其の他数種、盤上に羅列し、随意に裁制し、食せしめ、又葡萄酒へ水を和して飲しめ、魚、鳥、豚、牛、牝羊等の肉を烹熟し、或は炙熟し、パンは一食に二、三片適宜に任す。」

以前、オールコックの「大君の都」で、幕末の日本にやってきて、羊肉を手に入れられずに苦しむ西洋人の様子をご紹介したのですが、では初めて羊肉料理と出会った日本人たちはどんな反応を示したのだろうと、「拙者は食えん!―サムライ洋食事始」を見てみました。
タイトル通りに「食えん!」となったエピソードも山盛りでしたが、意外に屈託のない人たちの姿も目立ちます。

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橘南谿 「東西遊記」

ひつじ話

又、長崎にたまたまやぎという獣あり。
其形羊に似て色黒く、毛ながきもの也。
薩州鹿児島にも是あり。
隅州の内にはやぎの牧ありて、多く育てりという。
何の用になすものにや知らず。

江戸後期における羊飼育についてご紹介したときに触れた、橘南谿の紀行「東西遊記」から、羊に関する一文を。

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「ドリー民ツミツミ Dreamin’ Dollyのひつじつみ」

ひつじ画像・映像

無料ゲーム「ドリー民ツミツミ Dreamin’ Dollyのひつじつみ」がiOSとAndroidにてリリースとの情報を、キャラクターの「ドリー」をデサインされたイラストレーターの良安様からいただきました。ありがとうございます。

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画面タッチで漂う羊が落下!
頭にどんどん乗せて空高く積み上げよう!

というわけで、このジト目のクローン羊たちを積み上げるべく挑戦してみたのですが、現時点で37匹が限界です。
実際のとこ、どこまで積めるんでしょう、これ。20匹目あたりでグラグラし始めて、バベルの塔のごとく崩壊していくさまをもう何度目にしたことか……。
って、なんか順当にハマってますね。ぜひご一緒に。

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アメリカのネガティブキャンペーンの羊。

ひつじ画像・映像


2016年アメリカ合衆国大統領選挙において、共和党より立候補を表明したカーリー・フィオリーナ氏。
このフィオリーナ陣営が2010年にトム・キャンベル氏に対して行ったネガティブキャンペーン「デーモンシープ」がすごく怖い、との情報を、K&T様からいただきました。ありがとうございます。
……うん、怖いです、これ。
「羊の皮をかぶった悪魔」という批判の仕方じたいは、普通にありそうだとは思うんですが、その、なんでこんなエキセントリックな映像になってしまったのかと……。

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「ひつじ村の兄弟」

ひつじ画像・映像

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あらゆる種類のヴィジョンやスタイルをもつ“独自で特異な”作品群が選出されることで知られる、カンヌ国際映画祭「ある視点部門」。
1998年の導入からまだ歴史は浅いものの、キム・ギドク、ロドリゴ・ガルシア、ホン・サンスなどの名だたる監督たちがグランプリを獲得し、その才能を世界へ知らしめてきた。
そして、第68回を迎えた同映画祭「ある視点部門」からまたひとつ、世界をざわつかせる鬼才が輩出された――北欧アイスランドが生んだグリームル・ハゥコーナルソン。
力強く雄大な自然を舞台に、40年間不仲の老兄弟と羊の“絆”と“愛”を独特の切り口で描いた本作。
生きものたちの日常的な風景が、とある事件で一変。
一気に窮地に追い込まれてしまった人間の意地と覚悟が可笑しみたっぷりに映し出される。

acoaco様から、12月公開のアイスランド映画について教えていただきました。ありがとうございます。
「ひつじ村の兄弟」(英題「RAMS」)。12月19日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開とのこと。
美しい風景の数々に惹かれますね。今から冬が楽しみです。

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マザーグース 「いちのたつひに」

ひつじ話

As I was going to Derby,
Upon a market day,
I met the finest ram, sir,
That ever was fed on hay.
This ram was fat behind, sir,
This ram was fat before,
This ram was ten yards high, sir,
Indeed he was no more.
The wool upon his back, sir,
Reached up unto the sky,
The eagles build their nests there,
For I heard the young ones cry.
いちのたつひに
ダービーへいくとちゅう
せかいいちのおひつじにであった
あれでもほしくさくっていたのか
うしろのほうもまるまるこえて
まえのほうだってまるまるこえて
せたけはなんと十ヤード
ほんとにかけねのないところ
せなかにはえたようもうは
そらにもとどくいきおいで
わしがそこにすをかけていた
ちゃんとひなのなくのもきこえた

ときどきご紹介しているマザーグースをもうひとつ。
「いちのたつひに」の冒頭部分です。

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マルティヌス・ロールビー 「ローマ近郊、カンパーニャ地方の羊飼いの少年」

ひつじ話

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 「スコットランド国立美術館展」カタログ 

19世紀デンマーク、マルティヌス・ロールビーの「ローマ近郊、カンパーニャ地方の羊飼いの少年」です。
デンマーク黄金時代の理想化された自然の情景。

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