このニンフの祠に、仔を産んだばかりの牝羊が一頭、しげしげと通ってきていたが、いつもはたぶん群からはぐれたのであろうくらいに思われていた。そこでドリュアースは、懲らしめてもとどおり規律を守るようにしつけなおしてやろうと考え、青木の枝をわなのようにたわめたのを持って、羊を捕えようと岩に近寄った。
ところがその場に近づいて見たものは思いもかけぬ光景で、羊がまるで人間のように、あふれるほどに乳を吹きだす乳首を赤子にあてがい、赤子は泣きもせず、むさぼるように両の乳首にかわるがわる口をあてている―その口もとは、飲みあきた後、必ず羊が下で顔全体をなめてぬぐってくれるので、汚れもなくつやつやとしている。
古代ギリシアの恋愛物語「ダフニスとクロエー」については、ミレーの絵画やラヴェルのバレエ音楽などがよく知られていますが、こちらはシャガールのリトグラフです。上の絵は、捨てられて羊に養われていたヒロインのクロエーが、養父となる羊飼いに拾われるシーン。物語の始まりです。