トレイシー・シュヴァリエ 「貴婦人と一角獣」

ひつじ話

ぼくはまた顔をしかめた。「千花文を描くときには、いつもお父さんを手伝うのさ。菜園を作っていて、植物のことならなんでもよく知っている。つかいみちもね。下絵にかかったら、アリエノールに相談しよう。さて、千花文のなかに、なにか動物を入れたいね」。
しゃべりながら、スケッチをした。「忠実を表す犬もいいかな。貴婦人が一角獣を捕らえようとしていることをしめす猟鳥も使えそうだ。貴婦人の足もとに子羊を添えて、イエスと聖母を連想させる手もある。もちろん兎を一、二羽入れておこう。前足を顔に添える兎は、ジョルジュの署名代わりなんだ」
素描をすませてから、絵とスケッチを並べて、見くらべてみた。「もう一息だな」とぼくは言った。
(略)
「だいぶよくなったな」。ぼくが描き終えると、ニコラが言った。驚いたような声だった。「でも、注文主の了承なしで、こんなに手直しをしてもいいのかい?」
「葉叢模様の一部だからね」。ぼくは応えた。「背景の植物と動物の図案は織師に委ねられている。ぼくらが手をつけられないのは、人物だけだ。」

先日お話した、現在大阪・国立国際美術館にて展示中の「貴婦人と一角獣」をモチーフとする、トレイシー・シュヴァリエの歴史小説です。
引用は、図案を描いた絵師と、それをタペストリーのサイズに引き伸ばす下絵描きの青年ふたりの会話。実際にも、こんなふうに作られたのでしょうか。

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羊と子牛の頭突き訓練

ひつじ画像・映像


もりもとさんから、子牛にむかって頭突き未満の頭突きを繰り返す羊の映像を教えていただきました。ありがとうございます。
頭突き羊なんか猛獣だとか言っておいてなんですが、この子はかわいいですね。がんばってるのに報われてない感じがたまりません。

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ドラクロワ 「ヤコブと天使の闘い」

ひつじ話

「ヤコブと天使の闘い」
「ヤコブと天使の闘い」(部分)
右手にはヤコブが兄エサウのもとに贈り物として運ぶための家畜の群れと、それを追う人の姿が見えるが、その隊列は次第に遠ざかっていこうとしている。
その傍らで、神によって選ばれた人ヤコブの、人智を超えた存在との闘いはいつ果てることもなく続いていく。

19世紀フランス、ウジェーヌ・ドラクロワの晩年の傑作、「ヤコブと天使の闘い」です。
テーマは創世記から取られています。該当部分を下に。

ヤコブはセイルの地、エドムの野に住む兄エサウのもとに、さきだって使者をつかわした。
すなわちそれに命じて言った、「あなたがたはわたしの主人エサウにこう言いなさい、『あなたのしもべヤコブはこう言いました。わたしはラバンのもとに寄留して今までとどまりました。わたしは牛、ろば、羊、男女の奴隷を持っています。それでわが主に申し上げて、あなたの前に恵みを得ようと人をつかわしたのです』」。
(略)
彼はその夜起きて、ふたりの妻とふたりのつかえめと十一人の子どもとを連れてヤボクの渡しをわたった。
すなわち彼らを導いて川を渡らせ、また彼の持ち物を渡らせた。
ヤコブはひとりあとに残ったが、ひとりの人が、夜明けまで彼と組打ちした。
ところでその人はヤコブに勝てないのを見て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコブのもものつがいが、その人と組打ちするあいだにはずれた。
その人は言った、「夜が明けるからわたしを去らせてください」。ヤコブは答えた、「わたしを祝福してくださらないなら、あなたを去らせません」。

 旧約聖書創世記第三十二章 

なお、ヤコブの関わるお話はときどきしておりますので、こちらで。

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貴婦人と一角獣展(大阪・国立国際美術館)

ひつじ話

「味覚」
会期  2013年7月27日(土)─10月20日(日)
休館日 毎週月曜日(ただし9月16日(月)、9月23日(月)、10月14日(月)は開館。9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)は休館)
開館時間  午前10時─午後5時 金曜日は午後7時まで(入場は閉館の30分前まで)

大阪は国立国際美術館で開催中の、「貴婦人と一角獣展」を見てまいりました!
「貴婦人と一角獣」は、フランス国立クリュニー中世美術館所蔵の、六枚連作のタペストリーです。背景に多くの動物達が描きこまれており、六枚のうち四枚には子羊もひそんでいます。
子羊部分だけがあしらわれたグッズも販売されておりましたので、いそいそと買ってまいりました。マグネットと、ソーイングセットです。あとシールも。
「貴婦人と一角獣」展
ご縁があれば、子羊を探しに、ぜひ大阪に。子羊のほか、ウサギや犬たちもかわいいですよ。

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キヤノン「EOS 70D」のTVCM

ひつじ話

「REMOTE篇」
遠隔操作でシャッターが切れるEOS 70D
「これがイチガンREMOTE」

K&T様から、キヤノンのデジタル一眼レフカメラ「EOS 70D」のTVCMにムフロンが出ているとのこと、お知らせいただきました。ありがとうございます。見つめ合ってますね、カメラとムフロン。
ムフロンのお話は、このあたりでしております。

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アールベルト・カイプ 「馬を降りて休息する人と羊の群れとレーネンの眺め」

ひつじ話

「レーネンの眺め」
「レーネンの眺め」(部分)

 「17世紀オランダ風景画展」カタログ 

17世紀オランダ、アルベルト・カイプの「馬を降りて休息する人と羊の群れとレーネンの眺め」です。
カイプは、「平原の眺め」をご紹介しています。

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竜の口から帰還するイアソン

ひつじ話

ドゥリスの杯
文学の方の伝承では、メディアは呪文を唱えながら竜に近づき、香りの高い魔薬をふりかけ、さらに呪文を唱えながら竜の頭に薬を塗ると竜が眠り、イアソンが金毛羊皮を手に入れた、と伝えている。
が、ヴァティカン美術館にある紀元前5世紀の陶画(ドゥリスの杯)には竜の口からでるイアソンの前にアテナが立っている場面が描かれている。文学と違った伝承があったに違いない。

先日、アポロドーロスの「ギリシア神話」でお話した金羊毛神話について、もう少し。
金羊毛を得るまでの英雄イアソンの冒険については、オウィディウスの「転身物語」でお話したことがあるのですが、まったく違うストーリーが別にあったのですね。
なお、イアソンを描いた美術や文学作品は、これまでにずいぶんご紹介しておりますので、こちらでぜひ。

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モスクワ発パリ行き列車、ベラルーシの羊の群れに突っ込む

ひつじ事件

列車が羊の群れに
モスクワ発パリ行きのN23鉄道旅客便がベラルーシのブレスツク州でヒツジ8頭に激突、40分間停止した。
現場はベラルーシ・ポーランド国境付近。乗客に怪我はなし。

ak様から、羊と列車の衝突事故のニュースをお知らせいただきました。いつもありがとうございます。
怪我人が出なかったのは、不幸中の幸いでした。ええと、それで、羊のほうは……いえ、なんでもないです。

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サーフェリーとその工房 「動物のいる廃墟のある風景」

ひつじ話

「動物のいる廃墟のある風景」
「動物のいる廃墟のある風景」(部分)
サーフェリーが、プラハ宮廷での10年に及ぶ滞在を終えてアムステルダムに戻ったとき、動物は彼の作品の中でますます重要性を増していた。
プラハでの彼は、皇帝の取り計らいで、たくさんの異国の動物を写生することができた。
彼に様々な動物を描写するよい口実を与えたのは、兄でもあり師でもあるヤーコプ・サーフェリーに倣って取り上げた聖書や神話の、「地上の楽園」や「オルフェウスと動物たち」といった主題である。

 「17世紀オランダ風景画展」カタログ 

先日に引き続いて、動物たちのいる風景画を。ルーラント・サーフェリーとその工房による、「動物のいる廃墟のある風景」です。
サーフェリーは、「楽園」「音楽で動物を魅了するオルフェウス」「廃墟に群れる家畜」をご紹介しています。

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ドンデクーテル 「箱舟から下りた動物たち」

ひつじ話

「箱舟から下りた動物たち」
美しい風景画と動物画の一体化─17世紀オランダの画家メルキオール・ドンデクーテルはこのジャンルにおけるサヴェリーの最良の後継者である。
主題であるべき箱舟ははるか遠方の丘に霞むように描かれ、画面の大半を下船した動物たちが埋めつくす。

「絵画のなかの動物たち」からもうひとつ、17世紀オランダ、ドンデクーテルの「箱舟から下りた動物たち」を。
上の引用で触れられているサヴェリーについては、「楽園」「音楽で動物を魅了するオルフェウス」などがご参考になるかと。
箱舟と動物たちを描いたものは、ヤコポ・バッサーノの「ノアの箱船に乗り込む動物たち」エドワード・ヒックス「ノアの箱舟」などをご紹介しています。

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エドワード・ヒックス 「平和な王国」

ひつじ話

「平和な王国」
「平和な王国」(部分)
「狼は子羊と共に宿り、豹は子山羊と共に伏す。子牛は若いライオンと共に育ち、小さい子供がそれらを導く。牛も馬も共に草を食み、その子らは共に伏し、ライオンも牛もひとしく干し草を食らう。乳飲み子は毒蛇の穴に戯れ、幼子はマムシの巣に手を入れる」(イザヤ書)。
(略)
彼はクエーカー教の説教師として知られた存在となったが、一方で1820年代から40年代の晩年にいたるまで、上記のイザヤ書にもとづく「平和な王国」を繰り返し描き続け、その多くは友人たちに贈られたものだった。

19世紀アメリカ、エドワード・ヒックスの「平和な王国」のうち、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー収蔵バージョンです。
ヒックスは、「コーネル農場」「ノアの箱舟」をご紹介しています。

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ポンペイの羊飼い像

ひつじ話

羊飼い像
大理石 1世紀中頃 スタビア 66.5×16.5センチ
えり巻きのように小型のヤギをかつぐ牧夫は、羊の毛皮をトゥニカとして着用している。
右手に生まれたばかりのヤギと思われる動物をぶらさげ、左腕には麦の穂や果物があふれだしているカゴをさげている。
写実的な表現と、なめらかな表面処理から紀元1世紀中ごろの作と考えられる。

「世界遺産ポンペイ展 ポンペイとポンペイに暮す人びと」カタログ

古代ローマの羊飼い像です。「善き羊飼い」のポーズですね。
このモチーフについてはずいぶんお話をしておりますので、こちらで。
また、ポンペイ関連の記事は、こちらでぜひ。

記事を読む   ポンペイの羊飼い像

伊香保グリーン牧場 新牧羊犬がデビュー

ひつじを見にいく

渋川市金井の「伊香保グリーン牧場」にシープドッグショー用の雄の牧羊犬「ブーフ(BOOF)」が仲間入りした。
(略)
ブーフは、ワンワンと大きな声でほえてヒツジを集め、大きな群れを動かすのが得意なニュージーランドハンタウェイという種類の大型犬。昨年十一月にニュージーランドで生まれ、今年三月に同牧場にやってきた。
体長は約一・二メートル、体重三三キロ。最初はヒツジを集めるベテランの牧羊犬をサポートしながら、「ショーに、ちょい役で登場し、腕を磨いていた」(飼育スタッフ)という。
現在、同牧場で活躍している牧羊犬はニュージーランドハンタウェイがブーフを含めて四頭、ほえずに目の力でヒツジにプレッシャーをかけて群れを動かす大型犬のストロングアイヘディングドッグが三頭。
飼育スタッフによると、ニュージーランドハンタウェイの最年長の犬が人間の年齢だと約八十歳に当たる十二歳と老齢化したため、ブーフを後継に選んだという。
飼育スタッフは計四人。ショーに参加するヒツジは約九十頭で、ブーフはヒツジの群れの左右や後ろに入り込み、ヒツジを追い立てる。ショーは連日行われる。
同牧場では「牧羊犬は広い放牧場のヒツジを管理する私たちのパートナー。その見事な仕事ぶりをご覧ください」と来場を呼び掛けている。

ak様から、群馬県渋川市にある伊香保グリーン牧場のニュースを教えていただきました。ありがとうございます。
夏休み後半のお出かけ先として、素敵なスポットではないでしょうか。あ、でも、暑さ対策はしっかりと。

賢い牧羊犬たちが大活躍!会場の広さは国内最大級!
本場ニュージーランド仕込みのダイナミックなショー。
自由に遊ぶたくさんの羊たちを、訓練された牧羊犬が羊飼いのホイッスルを合図に迎えに行きます。
牧羊犬の、吠えて、走って、羊たちをまとめる指示行動。
目の前に広がる大斜面から駆け降りる羊たちの大群。スケール大で大満足!
後半は4?5頭の羊たちを障害物突破させるシープドッグトライアル。
思い通りに羊たちを操る牧羊犬の賢さに感心。
会場を取り囲むロケーションの良さも必見です!

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歌川国芳 「艶姿十六女仙 初平」

ひつじ話

「艶姿十六女仙 初平」
「艶姿十六女仙 初平」(部分)
右上の「コマ絵」、つまり小さな枠の中の絵は、中国の仙人、黄初平
白い石を数万頭の羊に変えたというエピソードの持ち主である。
それとは縁もゆかりもない江戸時代の女性の姿を重ね合わせるという、浮世絵にはよくある趣向だが、黄初平の意のままになる羊と、わが道をゆく猫が対照的である。

ネコ好きで知られる浮世絵師歌川国芳の連作「艶姿十六女仙」のうち、「初平」です。
これまでにご紹介したことのある国芳関連の記事はこちらで、
また、黄初平関連はこちらで、ぜひ。

記事を読む   歌川国芳 「艶姿十六女仙 初平」

羊があらわれた! 逃げられない!

ひつじ画像・映像

山道で荒ぶる羊と遭遇した人の動画を、もりもとさんに教えていただきました。ありがとうございます。

いや、逃げて下さい。全力で。頭を下げて突進してくる雄羊なんか猛獣ですってば。

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