マンデヴィル『東方旅行記』より「羊を産む木とガチョウを産む木」

ひつじ話

羊とがちょうの交換 羊とがちょうの交換(部分)
マンデヴィルはこの話を取り上げて、次のような結論を下す。
「だが私は、彼らにそれは大した奇跡だとは思わないと言った。
なぜなら、我々の国のある種の木は、鳥が出てくる実をつけ、しかもその実は、非常においしいからだ。
この場合、地上に落ちた鳥はまもなく死んでしまう」
オドリックと同様マンデヴィルも、一つの奇跡を正当化するために別の奇跡を使う。
というより、二人はともに、植物性の羊の奇跡があるのはアイルランドにガチョウを産む木があるからだと考えている……。

ときどきお話している植物羊関係でひとつ。
マンデヴィル「東方旅行記」の中で、植物羊と、それに対応するとされるアイルランドのガチョウのなる木の伝説を説明する挿画です。

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『ホメーロスの諸神讃歌』より「ヘルメース讃歌」

ひつじ話

そこで一匹の亀を見つけたが、これは大層な宝を手に入れたというもの、
ヘルメースこそが、最初に亀を歌奏でる具としたのだから。
(略)
葦の茎をそれぞれ程よい長さに切ると、
亀の甲羅を差し貫いてしっかり取りつけた。
その上から巧みをこらして牛の皮を張りまわし、
腕木を造りつけ、横木を渡して固くとめ、
よく鳴り響く羊腸の弦を七本そろえて張った。
さて、神はこうして愛らしい玩具を仕上げると、
それを手にとって、撥で弦を順番に試してみた。
すると竪琴は神の手の下で、驚嘆すべき音を立てた。

ヴァイキングの笛に続いて、羊素材つながりでもうひとつ。
「ヘルメースを讃め歌え、キューレーネーと羊多いアルカディアを統べる神」とのフレーズではじまる、古代ギリシアのホメーロス風讃歌「ヘルメース讃歌」から、ヘルメースによる竪琴の発明を語るエピソードです。

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ヴァイキングの笛

ひつじ話

ヴァイキングの笛

先日のブリューゲルの「子どもの遊戯」距骨のサイコロについてなど、羊の骨をつかった遊びについてはなんどかお話しているのですが、娯楽つながりということでもうひとつ。スウェーデン出土のヴァイキングの笛のようです。

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Sheep Pushes Fisherman Into Water

ひつじ画像・映像

もりもとさんから、よくできたコントみたいな頭突きひつじ映像を教えていただきました。ありがとうございます。
こうしてみると、頭突き羊って、おもいのほか普通にいるんですね。うかつに背中を見せてはいけない相手なのかもしれません、羊。

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ヴァザーリ『芸術家列伝』より「レオナルド・ダ・ヴィンチ」

ひつじ話

彼はしばしば羊の小腸を念入りに脱脂し、洗い浄めてたいへん薄いものにし、手のひらに納まるようにした。
それから隣の部屋に鍛冶屋が使うふいごを置き、腸の先をこれにつけて空気を吹き入れた。
するとそれは、たいへん大きなレオナルドの部屋いっぱいにふくらみ、居合わせた人々は隅の方に押しやられ、小さくならなければならなかった。
そして彼は、初めは小さかったのに大きな空間をしめることになった透明で空気のいっぱい詰まったこの腸を示し、徳もまたこれと同じことだと言った。

以前、ジョットの評伝をご紹介したジョルジョ・ヴァザーリによる、レオナルド・ダ・ヴィンチについてのエピソードです。
他にも、友人たちを驚かすためにおそろしげな装飾をつけた蜥蜴を飼っていたとか、部屋に資料として持ち込んだ動物の死骸の悪臭に気が付かなかったとか、はた迷惑そうなお話が満載されてます。ほんとにこんな人だったんでしょうか。

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ブーシェ 「羊飼いの娘イセに神であることを明かすアポロン」

ひつじ話

「羊飼いの娘イセに神であることを明かすアポロン」 「羊飼いの娘イセに神であることを明かすアポロン」(部分)

先日ご紹介した「変身物語」にあるアラクネのお話のなかで、一行だけの挿話として記されるイセとアポロンのエピソードが、フランソワ・ブーシェによる華やかな神話画になっていました。
まず、この挿話をもとにしたオペラが存在し、それにあわせた装飾画であるとのことなのですが、いやでも、どうやってあれがこれに……。
これまでのブーシェは、こちらで。

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『変身物語』より「アラクネ」

ひつじ話

アラクネは、織り進む。
ユピテルが、こんどはサテュロスに身をやつして、美しいアンティオペに双生児を見ごもらせたこと、(略)羊飼いとなってムネモシュネを、まだらの蛇となってプロセルピナをだましたこと─そんな場面が加えられてゆく。
海神ネプトゥーヌスも、あらあらしい雄牛に変じて、アイオロスの娘を籠絡し、河神エニペウスの姿でアロエウスの妻を身ごもらせ、雄羊となってビサルテスの娘をたぶらかした。
(略)
そこには、アポロンも登場する。
野人の姿をしているかとおもうと、隼の翼に包まれたり、獅子の皮をかぶったりもしている。
マカレウスの娘イッセをだましたときは、羊飼いに化けてもいた。

オウィディウス『変身物語』から、アラクネとミネルウァ女神の機織り勝負の物語を。
神々の非行を描いたタペストリーを織り上げ、女神に懲罰を受ける織手アラクネのお話ですが、どうも神々は悪事をはたらくときに羊飼いに化けがちのようです。
ネプトゥーヌスとビサルテスの娘のお話は、以前触れたことがありますね。

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ソポクレス 「オイディプス王」

ひつじ話

オイディプス  ここにいるこの男のことだ。会ったおぼえがあるか?
羊飼いの男  はて、すぐには思い出せませぬが。
使者  無理もございませぬ、王さま。それではこのわたくしめが、わかりかねているこの男に、はっきりと思い出させるようにいたしましょう。あのころのことを、どうしてこの男が、まったく忘れてしまったはずがありましょう。
─そのころわたしどもはキタイロンの山間で、この男は二群れの羊たちの番をし、わたくしは一群れの羊に草を食ませながら、共に日を送ったものでございます。春からはじまって、アルクトゥロスの星が、暁の空に瞬きはじめる秋がやって来るまで、たっぷり半年のあいだを、わたくしはそのようにして、彼といっしょに三度びもくりかえし過ごしました。そして、やがて冬になると、わたしくは自分の羊たちを追って故郷の羊舎へ、この男はこの男で、ライオスさまのところの囲いの中へ、それぞれ連れ帰るならわしになっておりました。
[羊飼いの男に]そうであったな? それともわしは、ありもしなかったことを申しておるか?
羊飼いの男  たしかにお前の言うとおりだ。遠いむかしのことではあるが─。
使者  さあそれでは、いまこそ答えてくれ。あのころお前は、ひとりの赤子をわしに渡したのを、覚えているであろうな─これをわが子同様に、育ててくれと申して?

ソポクレスの悲劇「オイディプス王」を。
自らの出生の秘密を明らかにすることで、それと知らず破滅へと近づくオイディプス王と、真実を知りながら告白をためらう羊飼いの男とのやりとりです。
ソポクレスについては、以前、「アイアス」をご紹介しています。

記事を読む   ソポクレス 「オイディプス王」

ルーベンス 「虹のある風景」

ひつじ話

「虹のある風景」

ピーテル・パウル・ルーベンスのエルミタージュ美術館所蔵「虹のある風景」が、現在、日本を巡回中です!

会期  2012年7月28日(土)?9月30日(日)
開館時間  午前9時30分?午後5時、金曜日は午後8時まで。(入場は閉館の30分前まで)
休館日  毎週月曜日(ただし9月17日(月・祝)開館、9月18日(火)休館)
特別開館  8月13日(月)、9月24日(月)

10月10日(水)?12月6日(木)
午前9時から午後5時まで(入場は午後4時30分まで)
*10月26日(金)?10月28日(日)は午後8時まで開館(入場は午後7時30分まで)
休館日 月曜日

お近くならば、ぜひぜひ。
展覧会カタログには、オウィディウス『変身物語』における「黄金時代」のイメージを描いたものであるとの解説がありましたので、相当すると思われる部分の引用を下に。

常春の季節がつづくのだった。
そよと吹く西風が、なまあたたかいその息吹で、種もなしに自生した花々を愛撫していた。
やがて、大地は、耕されもしないのに、穀物をさえもたらすのであった。
田畑は、掘り返されないでも、豊かな穂先で白く光っていた。
乳の河が流れるかとおもえば、甘露(ネクタル)の流れが走り、青々したひいらぎからは、黄金色の蜜がしたたっていた。

なお、これまでにご紹介しているルーベンスについては、こちらで。

記事を読む   ルーベンス 「虹のある風景」

中世日本のなぞなぞ

ひつじ話

ひとつかうじを とゝりかうとる     ひつじ
(略)一つきりしかない柑子(こうじ)を、取ったり置いたり、大切がってなかなか食べようとはしないとの意。
(略)解は、ヒトツカウジからト・カウを取ると、ヒツジ。

 なそたて 

ひつじ 何ぞ     馬の尾
羊に対して馬を置いたのが、働き。解、十二支の未は午のあと。

 寒川入道筆記 

16,7世紀頃に作られたなぞなぞ集録本を網羅した「中世なぞなぞ集」から、ひつじの出てくるものを。

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ブリューゲル 「十字架を担うキリスト」

ひつじ話

「十字架を担うキリスト」 「十字架を担うキリスト」(部分)

昨日に引き続いて、ピーテル・ブリューゲルを。ウィーン美術史美術館所蔵の「十字架を担うキリスト」です。左前景、兵士たちに連行されるキレネ人のシモンの足元に羊が。

記事を読む   ブリューゲル 「 ...

ブリューゲル 「子どもの遊戯」(続き)

ひつじ話

「子どもの遊戯」 「子どもの遊戯」(部分)
「指骨遊び」は豚、牛、羊などの指骨の一部(基節骨)を壁面に沿って一列に並べ、一定の距離から投げ当てるという一種のボーリング遊びである。

ピーテル・ブリューゲルの「子どもの遊戯」から、画面中央奥の建物の壁際で遊んでいる子どもたちについて。
こちらの絵は、以前、「お手玉遊び」の部分をご紹介しているのですが、あらためてこちらも。
また、これまでにご紹介しているブリューゲルについては、こちらで。

記事を読む   ブリューゲル 「 ...

アイソーポスの肖像

ひつじ話

アイソーポスの肖像

寓話集などをなんどかご紹介しているイソップ(アイソーポス)の姿を描いた、15世紀末の版画を。醜い外見をしていたと言われているのでそのように描かれていますが、にぎやかな背景のほうがむしろ気になります。
これまでのイソップ関連記事は、こちらで。

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サミュエル・パーマー 「眠る羊飼い」

ひつじ話

「眠る羊飼い」
パーマーはウェルギリウス作『牧歌』の新版(1821年刊行)にウィリアム・ブレイクが寄せた一連の木版画について、「濃密な詩情の精妙な調子を見事に表した」ものと評したが、稠密で暗い細密表現の影響はパーマー自身の描いた田園風景、たとえばこの《眠る羊飼い》にも認めることができる。
「マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵 巨匠たちの英国水彩画展」カタログ

19世紀英国のサミュエル・パーマーによる「眠る羊飼い」を。
パーマーは、ウィリアム・ブレイクに強い影響を受けています。これまでご紹介したブレイクは、こちらに。ウェルギリウス『牧歌』については、こちらで触れたことがあります。

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シュトルム 「雨姫」

ひつじ話

シュティーネは紡ぎ車をおいて立ちあがると、がっくりしおれていいました。
「やっぱりそうだった。マーレン、あんた、アンドレースの背中にしょってるものが見えなくって? またヒツジが一匹、かつえ死にしたんだよ。」
まもなく、わかいお百姓のアンドレースが部屋にはいってきて、死んだヒツジをどさりと、母親とマーレンの目の前におきました。
「ごらんよ。」
アンドレースはしずんだ声でいって、かっかとほてるひたいの汗を、手でぬぐいました。
ふたりの女は、ヒツジの死がいよりもアンドレースの顔を、じっと見やりました。
「あんまりくよくよしないでね、アンドレース。」 マーレンはいいました。 「あたしたち、雨姫さまを起こすつもりなの。そしたらまた、なにもかもよくなるわ。」

テオドール・シュトルムの童話集『たるの中から生まれた話』より、「雨姫」を。
日照りの続く夏のさかり、雨をつかさどる女神を目覚めさせようと旅に出る少年少女の物語です。

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