串田孫一 「雲」

ひつじ話

雲が羊の眞似をしているうちに
眞似が上手になり過ぎて
ちょっと厄介なことになりましたね
あなたが
あの羊の一匹を撫でたいというのなら
こちらへ呼んでみることも
出來ましょうが
私は呼び方に
自信があるわけではありませんから
群れたまんま
押し寄せて來るかも知れません
北の國の廣い草原を
そこに小徑があってもなくても
一列二列になって
殆どあたりを見廻すこともなく
宿命に從って歩いて來るあの羊たちとは
少し違っていることに
早く氣が附いて下さい

先日の「羊飼の星」に続いて、串田孫一をもうひとつ。もとは放送台本とのことですので、音読すると楽しいかもしれません。

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真鍮のひつじ型盆栽鉢

ひつじグッズ

苔盆栽

質感がいかした盆栽の鉢があると、匿名希望様からお知らせいただきました。ありがとうございます。
粗葉白髪苔の苔盆栽。こんなにかわいくてカジュアルな盆栽なら手を出してみたいものですが、きっととても奥が深いのでしょうね。

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星新一 「オオカミがきた」

ひつじ話

そしてまもなく、ついに本物のオオカミがあらわれた。
オオカミの群れは、少年とヒツジとどちらがうまそうか、見くらべて舌なめずりをしている。
少年はそれに気づき、瞬間的に考えた。
前述のごとく、彼の頭は悪くない。村人たちが「もう演習にはあきた」と話しあい、だれもかけつけてくれないだろうと想像した。
そこで、少年は大声でこう叫んだ。

星新一版イソップ物語、「いそっぷ村の繁栄」より、「オオカミがきた」を。毒気のあるオチと教訓がこのあとに続きます。……なんて叫んだと思います?

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串田孫一 「羊飼の星」

ひつじ話

戦争の末期、一九四五年の夏、厄介になっていた農家の隅で、ひと目を気にしながら殆ど隠れるようにして読んでいたフォントネルの本の中に、金星のことを「羊飼の星」と呼んでいるところがあった。
後に大きな百科事典を使えるような状態になってから確かめてみると、「羊飼の星」という項目があって、羊飼は山にいて、宵に夜明けに出る金星を安易に見られるから、という説明があった。
それ以来、金星を見れば同時に「羊飼の星」という呼び方を想い出すし、そのためにこの星が一段と身近なものになって来たのだった。
人々が時計を持つ時代になっても、羊の群と共に過ごす山上の生活者にはそれは不要である。
というのは、時を知る時計があれば、時に合わせて開き、また時が来れば閉じる花がある。
それを誰が名附けたとも知れず「羊飼の時計」と呼んでいる。
金星にこんないい名前を附けたのは、いつ頃のどんな人であったのかは、誰も知らないが、羊飼自身でなかったことは確かであろう。

串田孫一の随筆「羊飼の星」から。

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『和漢三才図会』より、「羊躑躅」

ひつじ話

羊躑躅(れんげつつじ)
黄躑躅(こうてきちょく) 老虎花(ろうこか) 黄杜鵑(こうとけん) 驚羊花 玉枝 羊不食草 鬧羊花(どうようか)
(略)
『本草綱目』(草部毒草類羊躑躅[集解])に次のようにいう。
羊躑躅(ようてきちょく ツツジ科)は集落近くの諸山にはみな生えている。
小樹で高さ二尺。葉は桃の葉に似ていて、三、四月に花を開く。
黄色で凌霄花(りょうしょうか 蔓草類紫葳)に似て五弁、蕊・弁はみな黄色で、気味はみな悪い。
花[辛、温、大毒がある] 羊はこの葉を食べると、足をばたばたさせ地を蹴って死ぬ。
 思うに、羊躑躅[和名は以波豆豆之(いはつつじ)、また毛知豆豆之(もちつつじ)ともいう]は、『本草綱目』の諸説に拠ると、今いう蓮華躑躅(れんげつつじ)である。

モチツツジのお話の続きです。以前、「羊」の項目をご紹介した「和漢三才図会」より、「羊躑躅」の項を。
典拠が中国の「本草綱目」なので、レンゲツツジを説明するものになっているようです。

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「最果警察」

ひつじグッズ

「最果警察」表紙

松久倖の4コマギャグマンガです。羊あふれる辺境にとばされてきた主人公の所長と、マイペースにもほどがある巡査の、フリーダムすぎる日常。

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ネパール移牧社会の民族誌

ひつじ話

出産直後の仔羊は森林の中で迷いやすいため、母羊の放牧中も群れから隔離する。
羊飼いは群れを放牧に出す時間になると、総出で仔羊を母羊のもとからとりあげる。
彼らは宿営地のまわりで仔羊を1カ所にまとめ、その上からグムラーリという毛布を1枚かけて身動きができないようにする。
(略)
放牧から帰った羊飼いが最初にするのが隔離した仔羊を母羊のもとへ連れてゆくことである。
この時に頼りになるのが羊の名称である。
たとえば、彼らはカーギー・ジブリー・ハーシー(耳の長い・首筋に黒い模様のある・白い羊)の仔はスッドゥー・ハーシー・パティ(全身白い・メスの仔羊)という具合に、出産した仔羊と母羊の名を一緒に覚えている。

ネパールの牧畜社会を精細にたどった民族誌から、仔羊の育成に関する章を。
基本の色柄、そのバリエーション、ツノや耳の状態などを組み合わせた名前をつけることで個体識別をしており、新人牧夫の最初の仕事は羊たちの名前を覚えることなのだとか。たいへんそうです。すごく。

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なくしてしまった結婚指輪、16年ぶりに「収穫」

ひつじ事件

スウェーデン北部の家庭菜園でニンジンを収穫したレーナ・パールソン(Lena Paahlsson)さんはびっくり仰天した。16年前になくした結婚指輪が出てきたからだ。
12月31日の現地紙ダーゲンス・ニュヘテル(Dagens Nyheter)によると、レーナ・パールソン(Lena Paahlsson)さんは1995年、クリスマスの前に娘たちとお菓子を焼こうとホワイトゴールドの結婚指輪を外してキッチンのカウンターに置いた。しかし、その後指輪はなくなってしまった。
(略)
しかし2011年10月、この年の最後のニンジンを収穫したとき、レーナさんは1本のニンジンにこの指輪がひっかかっているのを見つけた。この畑には堆肥かヒツジのふんしか使っていないので、指輪は台所のシンクに落ちてポテトの皮などと一緒に堆肥にされたか、ヒツジの餌になったのだろうとレーナさん一家は考えている。

ak様から、スウェーデンのちょっといい話をいただきました。ありがとうございます。
羊経由(たぶん)でもどってきた結婚指輪。……いい話、ですよね?

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14世紀フィレンツェの十字架

ひつじ話

十字架 十字架(部分)
裏側は、表のキリスト像の光輪に当たる場所に神秘の子羊が表され、その周囲に四福音書記者の象徴、すなわち聖ルカの牡牛、聖ヨハネの鷲、聖マルコのライオン、聖マタイの天使が配されている。

 「フィレンツェ─芸術都市の誕生」展カタログ 

14世紀中頃のフィレンツェで作られたと考えられている金工美術品です。裏側に神の子羊。
神の子羊があしらわれた工芸品というと、バーゼルの聖体顕示台や、クロイスターズ美術館蔵の十字架などをご紹介したことがあります。

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モチツツジ(続き)

ひつじ話

「羊」も「餅」もともに神に捧げるものであったことが注目される。
羊が犠牲獣となった背景には諸説あるが、そのおとなしい性格(殺される時にすら羊は従順である)も一つの理由である。まるで植物のように。
(略)
また「羊躑躅」と「もちつつじ」の結びつきはモチツツジの毛茸(もうじょう、細かい毛)の多い葉にあるかもしれない。毛茸は羊の毛を連想させる。

先日の、「一休、あて字を訓み給ふ事」で謎を残してしまった「モチツツジ」と「羊」の関係について、西川照子『神々の赤い花』の一章、「羊躑躅─羊は植物だった」より。
ちなみに、中国では「羊躑躅」はトウレンゲツツジに相当するようで、こちらについては、その有毒性のために「誤って食べた羊が躑躅(てきちょく)として死ぬ」との語源説が与えられています。
なお、おとなしい犠牲獣としての羊については、馬琴の「烹雑の記」で触れたことがあります。

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ダニエル・リッジウェイ・ナイト 「ロルポワーズの羊飼いの女」

ひつじ話

「ロルボワーズの羊飼いの女」

 「ブルックリン美術館所蔵 バルビゾン派の画家たち展」カタログ 

大晦日ですね。静かな心持ちになれそうな、「ロルボワーズの羊飼いの女」を。19世紀アメリカ、のちフランスに移住した、ダニエル・リッジウェイ・ナイトによるものです。

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ヘシオドス 「仕事と日」

ひつじ話

獣らは身震いして尾を股の間に入れる、
柔毛がその皮を覆っている獣でもな。
胸毛の厚い獣をすら、氷のごとき寒風は吹き通すのだ。
北風は牛の皮も吹き通す、その皮も風を防ぐことはできぬ。
また毛長の山羊も吹き抜けるが、ただ羊のみは、
その豊かな毛のゆえに、さすがに強い北風も決して吹き通すことはない。

「神統記」冒頭をご紹介したことのある、ヘシオドス(ヘーシオドス)「仕事と日」を。農事暦のなかに、真冬の家畜たちの様子を描いた一文が。

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『シャー・ナーメ』より、「火の祭りサデ」

ひつじ話

「火の祭りサデ」 「火の祭りサデ」(部分)
『シャー・ナーメ』からの一枚で、初期サファヴィー朝時代の代表的なペルシア人画家スルタン・ムハンマドが描いた「火の祭りサデ」を見てみよう。
伝説のペルシア王フーシャングが、突然現れた大蛇を殺そうと石を投げると、蛇は逃げたが、石が岩に当たって火花が散った。
王はこうして火を作る方法を発見し、神に感謝を捧げ、家臣や動物を集めて宴会を開いた。
これが、後にサデと呼ばれるようになった火の祭りの起こりであり、スルタン・ムハンマドの細密画はこの宴会の様子を描いたものだ。

そして夜がくると、山のように高々と火を燃やし、王は臣民とともに火を囲み、この夜を祝って酒をのんだ。
あかあかと燃えるこの夜に王のあたえた名が「サデの祭」。その祭がフーシャング王を記念して今もなお残っている。
(略)
彼はまた神よりあたえられた力と王権によって、牛・ロバ・羊を手におえぬ野生ロバや鹿から分け、生活に役立ちうるものを活用した。

イランの叙事詩『シャー・ナーメ(王書)』を描いた、サファヴィー朝のころの細密画と、「王書」の相当部分を。同時代のものとして、「子羊をかつぐモーゼ」をご紹介しています。

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ルイス・F・デイのキャビネット

ひつじ話

キャビネット キャビネット(部分)
アーツ・アンド・クラフツ展協会の1888年の第1回展で展示された、約12点の家具の一つ。
(略)
デイ(1845─1910)は刺繍に特別熱心だったが、テキスタイル、陶芸、壁紙などのデザイナー、あるいはアーツ・アンド・クラフツ運動の思想家としての方が有名である。
イギリス/1888年頃
ヴィクトリア&アルバート美術館

19世紀イギリス、アーツ・アンド・クラフツの家具を。ルイス・F・デイによる、黄道十二宮の装飾がついた刺繍用キャビネットです。白羊宮の部分に、棒馬ならぬ棒羊で遊ぶ子どもの絵が。

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BWH羊毛収穫法(続き)

ひつじ画像・映像


先日、羊の毛刈りロボットのお話をしたときに、BWH羊毛収穫法はどうなったんだろうとぼやいておりましたところ、K&T様から、採毛を行なっているBIOCLIPのHPYouTubeで見ることができる宣伝ビデオの存在を教えていただきました。ありがとうございます。
羊にとって大迷惑なのは変わりないのですが、こちらのほうが落ち着いて見ていられるかも。

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