そこでペレドゥルは馬を進め、苦患の王の子らの宮殿にたどりついた。
入っていくと、出迎えるのは女ばかりである。みな立ち上がって、彼を歓迎した。
物語をするうちに、鞍をおいた軍馬がもどってきたが、鞍には死骸が横たえてあった。
ひとりの女が立っていって、鞍から死骸を下ろし、扉の下にあった湯の器をもってきて清め、高価な香油を身体に塗りつけた。
すると男はよみがえって、起きあがり、ペレドゥルのそばに来て、挨拶し、嬉しそうな顔をした。
(略)
翌朝、若者たちは起き出して出かけてゆき、ペレドゥルは、かれらの愛する女人のためにも、同行させてくれるよう頼んだが、断られた。
「あなたがここで殺されても、よみがえらせるものがありませぬ」
みなはそう言ってでかけ、ペレドゥルはあとについていった。
(略)
やがて川の流れる谷があり、そのへりには木々が茂っており、川の両岸には平らな草地があった。
こちら岸には白い羊が、向こう岸には黒い羊の群れがいた。
白い羊のどれかがメエと鳴くと、黒い羊の一頭が川を渡ってきて、白い羊になった。
黒い羊がメエと鳴くと、白い羊が川を渡ってきて、黒くなった。
以前触れたマビノギオンに出てくる羊のお話をあらためて。独特の生命観の例として挙げられていたものですが、羊の谷を通って化け物退治へ向かうまでの経過が、また不可思議です。