猿猴庵 「新卑姑射文庫 三編」

ひつじ話

「新卑姑射文庫」より「糸細工」 「糸細工」(部分)
糸細工
(略)
鳥・けだものゝ形、悉くいろいろの糸細工にして、其側(かたわら)には、四季の草花等を紙細工にて生うつしになしたり。
甚(はなはだ)花麗にして、興ある観(みもの)なりけり。
其趣向は、十二支の形をなしたる故に、「開運十二支甲乙大寄(かいうんじふにしのゑとおほよせ)」と外題す。

 名古屋市博物館 内 出版物 より 『新卑姑射文庫』三編 

花鳥茶屋に続いて、江戸時代の見世物話をもう少し。
「尾張藩士にしてジャーナリスト」(こちらの本を購入した、名古屋市博物館ミュージアムショップの看板から)高力種信(猿猴庵)による、名古屋で興業された見世物の記録「新卑姑射文庫(しんひごやぶんこ)」より。細長い小屋を仕切って、糸細工の動物を展示したもののようです。

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ヴェロネーゼ 「聖カタリナの神秘の結婚」

ひつじ話

「聖カタリナの神秘の結婚」 「聖カタリナの神秘の結婚」(部分)

16世紀イタリア、パオロ・ヴェロネーゼによる「聖カタリナの神秘の結婚」です。左下に、洗礼者ヨハネと子羊が。国立西洋美術館蔵。
これまでにご紹介している同テーマの作品については、こちらで。

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ヒツジの鳴き声まねて安眠妨害

ひつじ事件

ドイツ南部コーブルク(Coburg)で2日、大声で動物の鳴き声を真似た男が、近隣住民の安眠を妨害した容疑で警察に身柄を拘束されるという事件があった。
49歳のこの男は、2日の午後10時45分前後に大きな声で様々な動物の鳴き声を披露。特にヒツジの鳴き声がお気に入りのようで、長い時は1つのパフォーマンスが20分以上も続いた。
現場に駆けつけた警察官が鳴き真似を止めさせようとしたが、男は拒否して鳴き続けようとし、「無分別かつ攻撃的」な態度をとった。このため、警察官らは男を一晩拘束する以外の選択肢はないと判断した。
男の体内からは、高濃度のアルコールが検出されたという。警察は、男が近隣住民の平穏な生活を乱した罪で起訴されるほか、「ひどい二日酔いで、獣のようにのたうちまわる羽目になるだろう」と皮肉った。

ak様から、ドイツの話題をいただきました。ありがとうございます。
トラ箱に入るひつじ(すみません、ちょっと言ってみたかっただけです。というか、そもそもドイツにトラ箱ってあるのかな?)。

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恩田陸 「ロミオとロミオは永遠に」

ひつじ話

イワキは小さく溜息をつき、立ち上がると尻をはたいた。
「ここから出たら、二人で掘りまくって、また世界中の大陸をトンネルで繋げてやろうぜ。でも、今の俺たちのドーバー海峡はここだ。俺は絶対フランスに上陸してみせる。俺たちのDデイは迫ってるぞ」
見ると、もうオワセは眠り込んでいた。イワキは頭を叩く。
「起きろ、オワセっ。眠ったら死ぬぞっ。メーリさんのひつじっ」
ハッとしたオワセが慌てて起き上がる。目をこすりつつ、スコップを握る。
「メーリさんのひつじ、わたれ、わたれ、メーリさんとわたれ、ドーバー海峡」
「メーリさんのひつじ、わたれ、わたれ、メーリさんとわたれ、ドーバー海峡」
些か調子っぱずれな声と共に、再び薄暗がりの中に、つるはしの音が響き始めた。

恩田陸の小説、「ロミオとロミオは永遠に」です。
「バトル・ロワイアル」または「死のロングウォーク」的設定プラス、「大脱走」的ストーリー。プラス、前世紀サブカルチャーへの愛、という濃度の高い一冊ですが、引用は、大脱走を企む学生たちのうちの二人、トンネル掘削担当のイワキとオワセの会話。
ひんぱんに睡眠発作を起こすやっかいな病を抱えたオワセの、一番の眠気対策は、なぜか「メリーさんの羊」を歌うこと。イワキがまた、一匹狼キャラなのにつきあいが良いんですよ。

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デューラー 「皇帝マクシミリアン?世の肖像」

ひつじ話

「皇帝マクシミリアン?世の肖像」 「皇帝マクシミリアン?世の肖像」(部分)
デューラーは、「最後の騎士」とよばれたこの人物を、真実高貴な姿として永遠に留めようと願ったに違いない。
帝が手にする柘榴の実は、内面の高貴さの象徴として、帝が若年の頃より好んだものという。

アルブレヒト・デューラーによる、ハプスブルク家の神聖ローマ皇帝、マクシミリアン?世の肖像です。画面左上に、双頭の鷲と金羊毛が。
金羊毛騎士団勲章をつけたハプスブルク家の人々については、こちらを。

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ヒツジ迷走 高島でレース

ひつじ春夏秋冬

声援を受け、職員に追われながらゴールに向かって走るヒツジ
滋賀県高島市マキノ町の農業公園「マキノピックランド」で25日、ヒツジが競走する「ヒツジレース」が行われた。追い立てられても走りださない姿に、会場は大きな笑いに包まれた。
同ランド一帯を会場に市が主催する「マキノカントリーフェスタ」のイベントの一つ。果樹園の雑草対策を目的に飼われている計5匹が100メートルの特設コースを走り抜けた。
ヒツジたちは、レース途中で止まるなど迷走ぶり。子どもたちは景品のお菓子を目当てに「勝ちヒツジ」を予想、声援を送っていた。

ak様から、中日新聞のひつじ記事をお知らせいただきました。ありがとうございます。
先日の米原の獣害対策実験も滋賀ですし、ひつじ度高い土地ですよね、滋賀。

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ヴァトー 「田園の愉しみ」

ひつじ話

「田園の愉しみ」 「田園の愉しみ」(部分)
これら二点の構図は非常によく似ている。
全体的な色調と大きさは全く違うのだが、構図上の類似のため、論者はまずシャンティイにある小さな作品が描かれ、次いでベルリンにある大きな画面が描かれただろうということで大まかな一致をみている。

以前、ベルリンはシャルロッテンブルク城蔵のアントワーヌ・ヴァトー「羊飼いたち」をご紹介したのですが、構図の類似から並べて語られることの多い「田園の愉しみ」をあらためて。シャンティイ、コンデ美術館蔵。

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花鳥茶屋

ひつじ話

花鳥茶屋
寛政年代から江戸の浅草と両国とに、孔雀茶屋を初め鹿茶屋や珍物茶屋、又大阪の下寺町と名古屋の末広町とに、孔雀茶屋を開場した。
是等の茶屋は、動物園の先駆をなすもので、(略)呼声に釣られて庭へ通ると、正面に金網を張つて、其中に孔雀や鹿を初め、種々の名鳥を飼つてゐるので、看客は其前に備付けた床机に腰をかけ、茶を飲みながら緩々と見物したのである。

江戸の見世物としての羊について引用した、朝倉無声の「見世物研究」からもうひとつ。
明治になって動物園ができるまで、日本の都市部には、花鳥茶屋と呼ばれる珍獣珍鳥の展示場がありました。説明を読むかぎりでは、美しい鳥を愛でながらのんびりお茶を飲むところらしいのですが、参考図に描かれているのは羊か山羊に見えます。羊を愛でながらお茶……?
見世物の羊関連で、平賀源内「放屁論」もあわせてどうぞ。

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シャルル=エミール・ジャック 「羊」

ひつじ話

「羊」
ジャック,シャルル=エミール(1813―1894)
バルビゾン派に属する動物画家、版画家。
(略)
ミレーとテオドール・ルソーの奨めによってバルビゾン周辺の田園風景を描き始めたが、羊の群れ、牛、馬、豚、鶏等の身近な動物画を得意とした。
彼の描く動物は版画技法で身につけた緻密な観察力と優れた技巧に裏付けられており、対象の本質が力強い筆致で生き生きと描出されている。

 「松方コレクション展 ―いま甦る夢の美術館―」カタログ 

ひさしぶりに、シャルル=エミール・ジャックを。これまでのご紹介ぶんは、こちらで。

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ペロー 「羊になった羊飼い」

ひつじ話

ある日ティルシスは、愛の島であがめられている神に言いました。
「(略)
ああ、あのつれない羊飼いの娘から、あれほど大切にされている羊たちよ!
おまえたちの幸せな群れの中に、私も入ることが許されたなら!
そうすればおまえたちと同じように、フィリスに気に入られる幸せが味わえるものを……。」

シャルル・ペローの昔話集から、「羊になった羊飼い」の一節を。
自分の飼う羊たち以外のものを愛そうとしない、美しくて冷たい女羊飼いに恋をした主人公は、愛の神に祈って、羊の姿を手に入れます。彼女に飼われ、幸せな日々が続くかと思われたのですが……。
ペロー童話は、以前に「グリゼリディス」をご紹介しています。

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フィリップ・シドニー 「アーケイディア」

ひつじ話

夜の間、憩いの家になってくれた木陰から身を起こし、彼らは旅を続けました。
ほどなく美しい景色が見えてきて(ラコニアの荒涼とした地に飽きた)ミュシドウラスの目を喜ばせました。
天をつく大木の森で覆われた高い山々、低きにあっても生き生きとした銀のせせらぎで気持ち良く感じられるささやかな谷間、目にも麗しいありとあらゆる種類の花々で五色に彩られた牧場があり、快い緑陰を抱く茂みは、多くのさまざまな喉自慢の小鳥たちの快活な歌声でそこが茂みであることが分かりました。
どの牧場にもゆったりと安心して草を食む羊たちが群れをなし、愛らしい子羊たちは、母羊に甘えてめえめえと鳴いておりました。
こちらでは、羊飼いの少年が決して老いを知らぬかのように笛を吹き、あちらでは、若い羊飼いの娘が編み物をしながら歌い、まるで歌声は手を慰めて仕事を捗らせ、手は歌声にあわせて拍子を取っているようでした。

16世紀イングランド、フィリップ・シドニーパストラル・ロマンスを。遭難し、羊飼いたちに救助された主人公が、彼らの出身地である理想郷アーケイディアに案内される場面です。
フィリップ・シドニーとほぼ同時代には、シェイクスピアクリストファー・マーロウエドマンド・スペンサーといった人々が。ご参考にぜひ。

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「シモンとクリスマスねこ」

ひつじグッズ

二十四ひきの羊
この羊飼いは、おとなにまけないくらい、りっぱいに仕事をこなす少年で、数をかぞえるくらい、わけはありませんでした。
けれども、この二十四ひきの羊の数をかぞえるのは、やっかいなことでした。
どうしてかというと、羊の群れのなかに、一ぴきの強情な羊がいたからです。
(略)
「メェー、メェー、やーだよ。かぞえてなんかほしくない!」
ほかの羊たちは、最初のうちは、おとなしく羊飼いにかぞえさせていました。
ところがそのうちに、もう一ぴきの、べつの羊もわがままをいいだしたのです。

レギーネ・シントラー文、ジータ・ユッカー絵の児童文学を。
クリスマスまでの二十四日が待てないシモンにおとうさんたちがしてくれる、小さな「おやすみのお話」がつまっています。わがままな羊たちのお話は、その九日目に。

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キーツ 「エンディミオン」

ひつじ話

羊飼いのあいだでは 昔からこんな話が信じられていた。
和毛(にこげ)のままの仔羊が 仲間たちから迷い出たなら、
そいつは必ず 猛り狂う狼や 獲物に目を凝らす豹に怯えつつ
人の通わぬ広野へ向かう。そこで仔羊は
牧神パーンの家畜となる。そのように羊をなくした者には
群れの繁栄が約束されていた。

ジョン・キーツの「エンディミオン」冒頭から。
エンディミオンの神話については、ブルフィンチの「ギリシア神話と英雄伝説」フラゴナールの「ディアナとエンデュミオン」をご紹介しています。

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スウィフト 「ガリヴァー旅行記」

ひつじ話

ボートには百頭分の牛の肉と三百頭分の羊の肉の他、それに見合う分量のパンと飲み物、さらに四百人の料理人が調理してくれた、すぐに食べられる食料、を積み込んだ。
生きたままの雌牛六頭と雄牛二頭、及び同じ数の雌羊と雄羊も積み込んだ。
(略)
ずっと後の話になるが、次々と航海に出て最後に帰国してみて分ったことは、それらの繁殖ぶり、とくに羊の繁殖ぶりが相当なものであったことである。
その羊毛の繊細さは、今後わが国の羊毛加工業者にとって大いに利益となるだろうと思う。

ジョナサン・スウィフト『ガリヴァー旅行記』から、第一篇「リリパット国渡航記」を。
小人たちの国を出ることになったガリヴァーのために航海中の食料が用意される場面。もちろんひとり分です。
生きた家畜はそのまま連れ帰って(一頭は船中で「鼠にさらわれた」との描写あり)、繁殖させているようです。

記事を読む   スウィフト 「ガリヴァー旅行記」

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