「世界の神話百科」より「アメン」

ひつじ話

アメン Amon
エジプトの「神々の王」。
最初は上エジプトのテーベの神で、豊穣の神として崇拝された。
徐々に重要な神とみなされるようになり、もっとも輝かしいファラオを守護する神となった。
2本の羽根をつけたかぶりものを着用したしたかたちで描かれることが多い。
時には雄羊の頭をもった姿でも描かれる。
紀元前2000年紀の第18王朝の頃には、アメンはエジプト全体の最高神となっていた。
そしてアメン・ラーという名で、太陽神と同一人物だとされた。
ただしラーは独自の神として信仰されつづけた。

昨日の「アレクサンドロス大王物語」に続いて、アメン神のお話を。なにをいまさらですが、神話事典から「アメン」の項目を引いてみました。

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「アレクサンドロス大王物語」

ひつじ話

自分の名前を冠した町を、町が永遠にひとびとの記憶に残るためには、どこに建設するべきかを、神から神託を得ようと思った。
すると、アンモン自身が、年老いてはいるが、金髪でこめかみに羊の角をつけたすがたであらわれ、彼にこのように語った。
王よ、羊の角をつけた神ポイボスが汝に告ぐ。
永遠につつがなく汝が若さの盛りを味わいたいならば、
プロテウスの島の対岸に名声に輝く町を建設せよ。

おしゃべりの樹のお話に続いて、アレクサンドロス・ロマンスをもう少し。
エジプトを征服したのち、アンモン(アメン)神の息子を名乗り、アレクサンドリアを建設するための神託を得る場面を、大王の従軍作家カリステネスの作ともされる「アレクサンドロス大王物語」から。
アレクサンドロス大王関係では、他に「プルターク英雄伝」や、リシマコスのコイン同じくカラー写真版を、アンモン神については、ユピテル・アモンの竿秤ヘロドトスの「歴史」などをご紹介しています。

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新美南吉 「ぬすびととこひつじ」

ひつじ話

おなかが すいて いる ぬすびとの めに、ふと まるまるした こひつじが 一ぴき、みんなと はなれて あそんで いるのが うつりました。
「あの こひつじは うまそうだ。」
と いって、ぬすびとは その こひつじを こっそり ぬすんで ふところに いれました。
(略)
けれど、こひつじは ころされるとは ちっとも しらずに ぬすびとの かおを みあげて いるので、ぬすびとは きゅうに かわいそうに なりました。
(略)
こひつじは おかあさんの おちちが こいしく なって きて、
「めい めい、おかあちゃん おかあちゃん おちち のみたい。」と なきました。
「こまった やつだな、おれには おちちが でないから やっぱり もとの まきばへ つれてって やろう。」と いって、ぬすびとは ぺこぺこの おなかを おさえながら また もと きた みちを かえって ゆきました。

新美南吉の童話集から、「ぬすびととこひつじ」です。あいだをずいぶん略してしまいましたが、機会があれば、ぜひ全文をお読みになってみてください。心をわしづかみにされてしまいますから。

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「らくだこぶ書房21世紀古書目録」

ひつじ話

「この目録で紹介しておりまする本は、21世紀になりましてから、この50年ほどの間に出版された古本に限ったものでございまして、当然のことながら、そちら様にしてみれば、まだ見たことも聞いたこともない『未来の古本』たち、すなわち来るべき21世紀の古書目録なのであります」
(略)
書名  羊典
著者名  スリーピング・シープ・編
(略)
序文を開いてみますと、
「本書は眠れぬ夜の寝台にて、羊を数えながら、羊のすべてを知る愉しい辞典であります。どうぞ枕元にいつでも一冊。なあに眠れぬ夜にだけ読めばいいんです。枕にもなりますし」
などと、のんびりしたことが書いてありますが、頁をめくっていきますと、写真あり、図版・イラストあり、あらゆる時代の書物や映像から羊たちが渉猟され、じつに素晴らしい編集作業の成果であることが分かります。

「未来の古本」という設定で作られた、クラフト・エヴィング商會による架空の書籍の紹介がつまった一冊、の中の一冊。
いや、ほんとに欲しいんですが、これ。ちなみに、書名は「ひつじてん」と読むようです。

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コードウェイナー・スミス 「ノーストリリア」

ひつじ話

「ノーストリリア」表紙
行こう、雄羊が踊りまわり跳ねまわるところへ
聞こう、雌羊があいさつし、メェーと鳴くのを
急ごう、子羊が駆けまわり、じゃれまわるところへ
見よう、ストルーンが育ち、あふれかえるのを
眺めよう、みんなが世界と富を
  刈りいれ、山と積むのを

コードウェイナー・スミスの長編SF、「ノーストリリア」から。
牧場主であり、また銀河一の富豪ともなった少年が、地球を買い取り、その地で冒険を重ね、恋をして、最後に故郷に帰る前に、恋した相手のために歌う歌です。
引用画像は、絶版になっている文庫の表紙。昨年新装版が出たのですが、表紙が羊じゃないので、ここはあえて古いほうを。

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JOMO CM「リラックス」篇A

ひつじ画像・映像

もりもとさんから、羊が出ているCM情報をいただきました。「ごゆっくり、どうぞ」が良いですね。

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おしゃべりの樹

ひつじ話

アレクサンダー大王と「おしゃべりの樹」
アレクサンダー大王と「おしゃべりの樹」(15世紀ごろの『シャー・ナーメ』写本ミニアチュア)。
ロジャー・クック『生命の樹―中心のシンボリズム』による。
紀元前四世紀のマケドニア国王アレクサンダー大王のアジア遠征は、まずペルシア帝国への侵攻からはじまりましたが、征服されたペルシアでは、ヨーロッパ各地に発生したアレクサンダー伝説と軌を一にして、かれを英雄としてたたえるイスカンダル(アレクサンダーのペルシア名)伝説が生まれました。
そんな伝説のひとつを物語っていると思われる細密画(ミニアチュア)があります。
イスカンダルが一本の樹を見あげているのですが、なんと! その樹は、おかっぱ頭(?)の人間やら、馬やら駱駝やら豹やら羊やら龍やら……の頭部を枝の先端にくっつけているではありませんか。
このあたまたちは、イスカンダルの野望を戒め、異国の地におけるかれの死を予言しているとのことで、この樹は、「おしゃべりの樹」と名づけられているそうです。

円明園十二生肖獣首銅像関係で二冊をご紹介している中野美代子の著書をさらに一冊。
動物の成る樹というと、やはり植物羊を思い出すのですが、どこかで両者がつながってたりするのでしょうか。

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「狂えるオルランド」第十七歌

ひつじ話

 化け物の住む岩屋の近く、
高く聳えた岩肌のその頂きに、
ほぼ同じ大きさのまた別の岩屋があって、
そこには羊が入れられていた。
その数はとてものことに数え切れぬが、夏にも冬にも、
オルクスは羊を草場に連れて行くとのことだった。
(略)
羊を囲った岩屋に着くと、大きな岩を押しのけて、
羊の群れを外に出し、われらを中に閉じ込めて、
首から吊した笛を吹きつつ、
羊といっしょに草場へと出かけて行った。
(略)
 群れといっしょにわれらも外に出ないようにと、
オルクスは岩穴の戸口にその手を差し渡し、
出口でわれらを捕まえて、背中に山羊の皮やら
羊の毛があれば、そのまま通す。
男も女も、粗い毛皮を身に纏い、
かくも異様な手だてを用いて、外に出た。

イタリアルネサンスの叙事詩、「狂えるオルランド」に出てくるエピソードです。
描かれるのは、盲目にして羊飼いでもある化け物オルクスに捕らわれた王妃を救うために、山羊や羊の毛皮をかぶって脱出をはかる王ノランディーノ一行の奮闘。
ホメーロス「オデュッセイアー」に登場するキュクロープスが下敷きになっているようです。

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「羊を数えて眠る本」

ひつじグッズ

「羊を数えて眠る本」表紙
ベッドに横たわり、心をしずめて、ゆったりとした気分で本を開いてください。
指示にしたがって羊を数えていきましょう。
まぶたが重たくなってきたら、本を閉じて、そのままお休みください。

もりもとさんから、207ページの本文すべてに、ひたすらぎっしり羊の群れが描かれている本をいただきました。ありがとうございます。
その名も「羊を数えて眠る本」。一応のストーリーはあるのですが、眼目はむしろ、タイトル通り羊たちを数えるほうかと。ミレーを参考にしたかと思われる、淡々とした雰囲気のイラストが気持ちをなごませる一冊です。

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ヒツジのしっぽの煎餅風

ひつじ話

従来、モンゴル遊牧民は煮込んだヒツジの脂肪尾を薄く切って手のひらに載せて噛まずに飲み込む習慣があり、脂肪尾はヒツジ肉のなかでも大切な部分としてみなで分け合って食べる。
近年になって、都会の人びとにもこの脂肪尾をおいしく食べてもらおうと、このような工夫が生まれたと思われる。
材料〕 ヒツジのしっぽ、卵白、干した果物、煎りゴマ、砂糖などを適宜用意しあらかじめ練っておく。
作り方〕 ヒツジのしっぽを薄切りにし、練っておいたあんを薄く伸ばすように載せ、これを卵白にくぐらせて170度のサラダ油でさっと揚げるだけでできあがり。

「世界ことわざ辞典」「十五世紀パリの生活」を読んで以来、美味であるらしい羊の尻尾のことが気になっていたのですが、「世界の食文化 (3) モンゴル」の一章、「内モンゴルの代表的な地方料理」のなかに、こんなレシピがありました。酒のつまみに最適らしいです。

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小川一水 「天冥の標〈2〉―救世群」

ひつじ話

「じゃあ、これで」
ロボットが退場し、今度はふかふかした毛皮に覆われた動物が現れた。華奈子は微笑んだ。
「すてきよ。その格好なら可愛がってあげるわ」
「ありがとう。これからもよろしく」
螺旋型の角を持つ羊が、ぺこりと頭を下げた。
ポッドのはしで赤ランプが点滅し始めた。
「ああ、バッテリーが切れそう。あなた、すごい電気食うわね。ひとまず切り上げてもらえるかしら」
「わかった、退避するよ。じゃあ、また」
「またね」
羊が消えると、華奈子はポッドの電源を落とした。

小川一水の「メニー・メニー・シープ」、続刊が出てます。もう、続きが気になって気になって。
裏表紙には、「すべての発端を描く」という惹句。前巻から一転、一気に時代をさかのぼり、激甚な被害をもたらす感染症と闘う、近未来の人々が描かれます。おおそう来たか、といった展開なのですが、たぶんこれだけでは終わらないんだろうなと。ああ、続きが気に(以下くり返し)。

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エドワード・ヒックス 「ノアの箱舟」

ひつじ話

「ノアの箱舟」 「ノアの箱舟」(部分)
エドワード・ヒックスは1780年、ペンシルヴァニアのクウェーカー教徒の家に生まれ、幼くして母を失い、両親の友人夫妻によって育てられ、後に馬車製造の仕事につくが、馬車の製造には塗装が不可欠なので、同時に、店の看板の絵や飾り文字、チェストや小箱の装飾、椅子の製作を行い、クウェーカー教徒的勤勉さで「平和なる王国」の絵を喜びに満ちて描き、後には説教師にもなって、クウェーカー教の創始者ウィリアム・ペンの理想を説き、かつ理想の王国のイメージを描き、1849年に世を去る。

19世紀アメリカの画家、エドワード・ヒックスの「ノアの箱舟」です。フィラデルフィア美術館蔵。
引用は、金井美恵子の美術エッセイ「スクラップ・ギャラリー」から。

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神戸市立博物館 「トリノ・エジプト展」

ひつじ話

2010年3月20日(土)より5月30日(日)まで、神戸市立博物館で開かれている、「トリノ・エジプト展 ―イタリアが愛した美の遺産―」を観て参りました。
ひつじ度、高いです。

アメン・ラー神に牡羊の頭部を捧げるペンシェナブの像
アメン・ラー神に牡羊の頭部を捧げるペンシェナブの像
新王国時代、第19王朝(前1292?前1186年頃)
テーベ西岸、ディール・アル=マディーナ出土
石灰岩、彩色  高さ:63? 幅:20? 奥行:47?

 「トリノ・エジプト展」カタログ 

こちらの印象的な像のほか、前8世紀から前6世紀頃の、金板に牡羊の頭を型押ししたパーツをつらねた首飾りなどが見応えあり。始まったばかりですので、是非。
こちらの展覧会は、神戸展のあと、
2010年6月12日(土)―8月22日(日) 静岡県立美術館
に巡回が予定されています。

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「随園食単」

ひつじ話

羊頭(ヤントウ 羊頭の細切煮付)
羊頭の毛は浄(きれ)いに去(の)けねばならぬ。
もし浄いにならなければ火で焼き、洗い浄めて切開き、とろけるほど煮てから骨を去り、その口内の老(かた)い皮は皆浄いに去けねばならぬ。
眼玉は二つに割って黒い皮を去り、白い球も用いない。
頭を小塊に切り砕いて、老肥した雌鶏の汁(だし)を取ってこれを煮る。
しいたけと筍の細切り・甜酒(あまいさけ)四匁・醤油一杯を加える。
もし辣(から)いのが好みなら小胡椒十二粒と葱の白根二十段(きれ)を用いる。
もし酸ぱいのが好みなら、米醋一杯を加える。
羊羹(ヤンケン 羊肉の餡かけ汁)
煮熟した羊肉を取って骰子大の小塊に斬り、鶏の汁(だし)で煮て、筍としいたけと山芋との細切りを加えて一緒に煮込む。

羊羹ばなしつながりでもうひとつ。
「中華飲酒詩選」などをご紹介している青木正児訳註による、袁枚の料理書「随園食単」より、獣類の部から羊料理の部分を。
以前ご紹介した「斉民要術」の解説書に載ってた料理よりは、少なくとも「羊羹」のほうは、自力で再現が可能な気がします。おいしそうですし。

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