「笑林」

ひつじ話

ある人、いつも野菜ばかり食べていた。
ある時、いきなり羊の肉を食べたところ、五臓神が夢にあらわれて言った。
「羊が野菜畑を踏み荒らした。」
○五臓神=心臓、肺臓、肝臓、腎臓、脾臓のそれぞれに宿る神。合わせて五臓神という。

後漢の邯鄲淳が編んだ最古の笑話集「笑林」から。
笑話集つながりで、「笑府」もどうぞ。

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「火天」と「青羊」

ひつじ話

仏法においては、上下・日月・四方・四維を守護する天衆を「十二天」とする。
則ち、梵天(上)、地天(下)、日天(日)、月天(月)、帝釈天(東)、閻魔天(南)、水天(西)、毘沙門天(北)、火天(東南)、羅刹天(西南)、風天(西北)、大自在天(東北)であるが、これらを総称して十二天という。
この十二天のうちの一つ、「火天」の様相については、
(略)
則ちその身体の色は火色を象って深赤色、身体の中心にもまた炎を象徴する三角印を持し、青羊に乗っている、という。
仏教の諸物諸天の造像の中にも私見によれば五行の法則が多数みられるが、「青羊に乗る火天」もまたその好例の一つである。
「火天」則ち「火」であって、この火を生むもの、火の母は「木生火」の理によるときは「木気」。
木気の尽きるところに火が生れるので、出来れば終りの木気が好ましい。
その木気は三合では、
  ・亥(猪) 生
  ・卯(兎) 旺
  ・未(羊) 墓
となり、羊は木気の墓(ぼ)、終りである。
(略)
火天の場合もその羊は、火を生み出す母としての羊である以上、木気でなければならず、それが(略)木気を象徴する「青」の羊なのである。

吉野裕子による、陰陽五行思想と日本の民俗との関わりについての論考から、十二天の火天が乗る青い羊に関する一文を。
陰陽五行の持つ法則のうち、「木は火を生じる」という「相生」にしたがえば、「火」天の乗り物は「木」、それも「生・旺・墓」(始まり、壮んになり、終わる)という「三合」の法則の終わりに相当するものでなければならない。これにあたるのが「青い羊」である、というお話です。

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シャルル=エミール・ジャック 「羊の群の帰り」

ひつじ話

「羊の群の帰り」
羊飼いが絵の主役になることは少ないジャックの通例に反して、ここでの中心は女性の羊飼いである。
また、そのすぐ下で後ろを振り返っている羊に注目したい。
ジャックは、羊のさまざまな習性を観察して描いた画家といわれ、「羊のラファエロ」の異名をとっており、似たように見える羊でも、ジャックの羊は、個性を持って描かれている。

「中村コレクション秘蔵の名品 コロー、ミレー バルビゾンの巨匠たち展」カタログ

シャルル=エミール・ジャックの「羊の群の帰り」です。
これまでご紹介しているジャックの絵は、まとめてこちらで。

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ロングフェロー 「エヴァンジェリン」

ひつじ話

一番先きに鈴を下げて、エヴァンジェリンの綺麗な仔牛は、
雪のやうな白い毛色と、頸輪にひらめくリボンを誇つて、
まるで人間の情を解するもののやうに、静々と歩いて行つた。
次に、鳴く羊の群を連れて、羊の好きな海岸の
牧場から羊飼ひが帰つて来た。其後ろには番犬が、
根気好く、重々しく、又自分の直覚をさも得意気に、
堂々と、落着いて、羊の群の端から端へと、歩いたり、
房々した尾を振つたりして、落伍の羊を駆り立てて居た。
羊飼ひの眠むる時、番犬は代つて羊の支配者であつた。夜霧が降つて、
星の照らす静けさを、狼が吠える時、彼は羊の保護者であつた。

19世紀アメリカの詩人ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローの「エヴァンジェリン」から。
18世紀半ばのアカディーを舞台にした、戦争のために引き裂かれた恋人たちの放浪と再会の物語。引用はその冒頭部、いまだ平穏を保つ幸福な村に暮らすヒロインの姿が描かれます。

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「十二支のお節料理」

ひつじグッズ

「十二支のお節料理」
お節料理をつくるため
年神さまは十二の動物をえらび
それぞれじゅんばんにかかりをきめました
(略)
ひつじはしたごしらえのかかりです
だしをとったりかわをむいたりきりわけたり
材料をむだなくつかいます

川端誠の絵本です。
十二支の動物たちが分担して、年始の仕度をするお話。鼠は餅つき、牛と虎は食材集め、と続いていって、羊は下ごしらえ担当のようです。あの手でどうやってかつらむきを……。

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サミラ・ブーンの動物マスク

ひつじグッズ

愛知芸術文化センターのアートショップで、不思議なマスクを買ってしまいました。
スタジオ サミラ・ブーンによる、その名も「GET WELL SOON MASKS」。マスクをつけると口元だけが動物になれる、そんなグッズです。
こんな感じ。
ペンギンが持つと、マスクが腹巻き状態に。
って、わかりにくいですね、ぬいぐるみが持ってても。
公式サイトの紹介ページで、ぜひご確認ください。

STUDIO SAMIRA BOON 内 GET WELL SOON MASKS
及び ショップ一覧

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バーナデット・ワッツ「イソップのお話から」より「オオカミとヒツジかい」

ひつじグッズ

「オオカミとヒツジかい」
オオカミとヒツジかい
オオカミが1ぴき、ヒツジのむれに、ながいことつきまとっていました。
でも、ちっともおそいかかるようすはみせません。
はじめのうちは、ヒツジかいも用心して、きびしくみはっていましたが、いつまでたっても、なにもおこりません。
ヒツジかいは、だんだん、オオカミを、じぶんのともだちみたいにおもいはじめました。
ある日、用事があって、まちへでかけることになりましたが、へいきでヒツジをオオカミにまかせたまま、いってしまいました。
ヒツジかいのすがたがみえなくなったとたん、オオカミは、ヒツジにおそいかかって、かたっぱしからたいらげてしまいました。
ヒツジかいがもどったときには、もう、あとのまつり。
「オオカミにヒツジをまかせるなんて、おれもよっぽど、どうかしてるよ!」

バーナデット・ワッツの絵による、イソップ寓話集です。
イソップ寓話は、これまでに、「狼どもと羊の群れと牡羊」「狼と仔羊」などをご紹介しています。

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「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」追加クエスト

ひつじ画像・映像

DSの「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」にハマっている、という話をしていたら、カーター卿さんに、「クエストNo.126「ぱふぱふ少女チャミー」は受けられましたか?」と聞かれました。Wi-Fiでダウンロードする追加クエストとのことなので、あわてて手に入れてプレイ。…………うわあ。ヒツジが、ぱふぱふがー、というわけで、下に経過を。
モンゴルの草原がモデルとおぼしきエリアに住む「草原一のぱふぱふ少女」チャミーからの依頼を受けて、ぱふぱふをしてもらうために必要なものを取ってくる、というクエストなのですが。
取ってきました。渡しました。目をつぶるよう言われました。さて。
目をつぶってます。
なに? 誰になにを?
めー?
…………はい?
ひつじ!
ああっ。
ほっぺたをヒツジの尻に!
うっとりしてる、主人公、うっとりしてる。
報酬はウール。
クエストクリア報酬はやわらかウールでした。そうでしょうとも。
現在、ドラクエをなさっているかたで、まだこちらのクエストを受けておられないかたは、ぜひ一度この脱力感を味わってみてくださいませ。いえほんとに。

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「斉民要術」より 羮の作りかた

ひつじ話

「ヒツジの足のあつもの」の作りかた
ヒツジの足七具(二八蹄)、ヒツジ肉一五斤、ネギ三升、豆鼓汁五升、コメ一升でつくり、味を口でととのえる。
これに生ショウガ一〇両、「ちんぴ」三枚を加える。
「ヒツジ肺の煮こみ汁」の作りかた
ヒツジの肺臓一個を煮て、細かく切る。
別にヒツジ肉のあつものをつくり、ウルチゴメ二合、ショウガとあわせて煮る。

華元の御者司馬司期を怒らせた、傾国の美味、ヒツジの羮(あつもの)。実際のところ、どんな食べ物なのだろうと、6世紀の農書「斉民要術」の解説書を見てみました。……おいしそうでは、ありますが。
中国の料理書関係では、これまでに、「居家必用事類全集」「山家清供」をご紹介しています。

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フラ・アンジェリコ 「聖母戴冠」(ウフィツィ美術館版)

ひつじ話

ウフィツィ美術館の「聖母戴冠」 「聖母戴冠」(部分)
画面中央から発する天上の光が金箔地に施された精緻な放射線によって表され、天の祝祭劇を輝かしく演出している。
感覚的であると同時に啓示的な光の表現は、フラ・アンジェリコ絵画の不可欠な構成要素である。

ルーブル美術館所蔵の「聖母戴冠」をご紹介している、フラ・アンジェリコの同主題の作品です。右下に聖アグネスが。ウフィツィ美術館蔵。

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李白 「将進酒」

ひつじ話

「将進酒」   酒をささげ進むる歌
(直訳)
君見不ヤ黄河之水 天上ヨリ来ル
奔流シテ海ニ到リ復回ラ不。
君見不ヤ高堂ノ明鏡 白髪ヲ悲シム
朝ニハ青糸ノ如ク暮ニハ雪ト成ル。
人生 意ヲ得テ須ラク歓ヲ尽スベシ
金樽ヲシテ空シク月ニ対セシムル莫レ。
天 我ガ材ヲ生ズル必ズ用ヰル有リ
千金散ジ尽シテ還復来ル。
羊ヲ烹牛ヲ宰リテ且ク楽ミヲ為サン
会ニ須ラク一飲三百杯ナルベシ。
(意訳)
君見ずや黄河の水は源を天上に発し
奔流して東海に到り再び返らぬではないか。
君見ずや高堂の鏡に映して悲しむ白髪も
朝には青糸(くろいと)の如く暮には雪となつたのではないか。
人生は心まかせにして須らく歓楽を尽すべきだ
金樽を空しく月に照らさせてはならぬ。
天が我が才能を生んだ以上必ず用ゐる所が有らう
千金使ひ果しても元通り またやつて来る。
牛を割(さ)き羊を烹(に)て、まあ大いにやろう
すべからく一気に三百杯飲むべきだ。

厨娘関連で著書をご紹介した青木正児による、「酒徒が酔余の朗詠に供するのが主なる目的」との凡例がすばらしい「中華飲酒詩選」から、李白の「将進酒」の一部を。ぜひ暗誦できるようになって、目的にかなった使い方をしてみたいところです。
李白は、「送蕭三十一魯中。兼問稚子伯禽」「金華牧羊兒」「蘇武」といった詩をご紹介しているほか、「誹風柳多留」ではからかいの対象にもなっているようです。

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羊をして狼に将たらしむ

ひつじ話

漢の十一年(前一九六年)、黥布(げいふ)が叛いた。
お上は病気であり、太子に兵をひきいて行かせこれを撃たせようとした。
四人は相談した、「だいたいここへ来たのは、太子さまの地位を保つためだ。太子さまが兵をひきいられると、状況は危い。」そこで建成侯に進言した、
「太子さまが兵をひきいられますと、功を立てても地位が太子以上になるわけではありませんし、功がなく帰還すればそのことから災難を受けることになります。
その上、太子さまがいっしょに行かれます将軍たちは、いずれも以前お上とともに天下を平定した猛将です。
今、太子さまに彼らを指揮させるのは、それこそ羊に狼を指揮させるのと変りありません。
誰も太子さまのために力を尽くすことを承知しないでしょう。
その功のないことはまちがいありません。

漢の高祖に仕えた張良の事績である「史記 留侯世家」より、故事成語「羊をして狼に将たらしむ」の由来となったお話を。
お上(高祖)の意向から、その地位が危ぶまれている太子のために、張良は四人の賢者を補佐とすることを薦めます。危機的状況にあって、賢者たちは、高祖に太子の指揮による出兵を諦めさせることに成功するのですが、その方法が、太子を羊、将軍たちを狼にたとえることでした。目的は達してるんですが、なんかこう。
これまでご紹介した故事成語は、まとめてこちらでどうぞ。

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宋代の厨娘図

ひつじ話

厨娘図
宋代の画像磚の「厨娘図」
宋代の厨娘にはたしかに尋常ならざるところがあったが、いったいいかなる姿かたちをしていたのであろうか。
出土した宋代の磚刻(せんこく)〔彫刻を施した煉瓦〕から、厨娘の風采を見て取ることができる。
中国歴史博物館収蔵の四個の厨事画像磚に、厨娘が料理をしているいくつかの光景が描かれている。
磚刻に描かれている厨娘の服装はだいたい同じで、いずれも髷をきちんと高く結い、服装をきちんとととのえ、頭が切れてやり手である風格を漂わせ、ひいては優雅で落ち着いている気配さえにじませている。
(略)
これらの画像磚はみな宋代の墓から出土したものであるが、宋代の人びとが厨娘の画像磚を副葬品にしていたことは、生前に厨娘を雇ったことがないので、死後にその望みがかなうよう願ったか、生前に厨娘の作った料理を味わっていたので、死後も生きているときと同じように厨娘にかしずかれることを願ったことを意味する。

青木正児の「酒の肴・抱樽酒話」井波律子の「中国文学の愉しき世界」などでお話している、女料理人「厨娘」についてもう少し。

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沖祐市 「ひつじさんとわたし」

ひつじグッズ

「ひつじさんとわたし」
ただ緩んでいく。静かに美しく流れるピアノの音。
どんな時間の中にも調和する美しいピアノ・ミュージック。
ゆっくりと心と体を緩ませる、寝る前の何もしない時はもちろん、
集中したい時のBGM、読書のうしろで静かに流すなど、
サティやゴンザレスの音の様に、その場の環境にぴったり溶け込む家具のような音楽です。

以前、「ひつじがすき 日本のひつじ牧場」のコメントで、SO様に教えていただいたCD「ひつじさんとわたし」を、遅ればせながら購入いたしました。
東京スカパラダイスオーケストラのキーボード沖祐市の、ピアノソロアルバム。すっきりとしたメロディラインが、なんともひつじな感じです。
東京スカパラダイスオーケストラ公式サイト内の、「ひつじさんとわたし」のための沖祐市によるショート連載もあわせてぜひ。

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羊の羮のうらみ(続き)

ひつじ話

楚が鄭に命じて、宋を攻撃させた。
宋は華元を将軍とした。鄭の軍は宋の軍を打ち破り、華元を捕虜にした。
華元は、これから戦おうという時、羊をつぶして士卒にふるまったが、華元の御者だけは羊の羮の分配がなかったので、御者は怨みに思い、〔華元の戦車を〕鄭軍の中へ駆け込ませ、それで宋軍は敗れ、華元は捕えられたのである。
宋は戦車百台と飾りをつけた馬四百匹〔の賠償〕で華元を返して貰うことにしたが、まだそれらを全部鄭に送っていないうちに、華元は逃げ出して、宋へ戻った。

 史記 宋微子世家 

華元は羊をつぶして兵士たちに食わせたが、彼の〔戦車の〕御者羊斟(ようしん)には与えなかった。
これを怒った羊斟は〔車を〕とばし鄭の陣へ駆けこんだので、鄭は華元を捕虜にした。

 史記 鄭世家 

戦に先立ち、華元は羊を殺して戦士たちに振舞ったが、華元の御者をつとめる羊斟はそれから外された。
戦となるや、羊斟は、
「昨夕の羊は、子(あなた)がとりしきられた。今日の戦は、我(こちら)がとりしきります」
と、車を御して鄭軍に駆け入ったため、敗戦となったのである。

 春秋左氏伝 宣公二年 

羊羮のうらみで大変なことになるのは、中山国だけではなかったようです。
春秋時代の名宰相華元が、羊の羮のために陥った敗戦のエピソード。ちなみに、鄭伯の「肉袒牽羊」は、この十年後のお話です。

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