『子不語』より、「廟中の怪」
一つの廟があって、関羽、張飛、劉備の三神像がまつられてあった。
廟門は長い年月鉄鎖でとざされていて、春秋の祭祀のとき鍵をあけるのである。
伝えるところでは中に怪物がいると言う。
香火を供える僧もここには敢えて住まなくなった。ある日、陜西の客商が羊千頭を買い求めたが、日暮れてから泊まるところがないので、宿を廟中に求めた。
住民は鎖をあけてこれを入れてやり、事情を離してやった。
羊商人は腕力には自信がある。「心配ない」と行って扉をあけて入った。
群羊を廊下に放し飼いにし、自分は羊鞭を持ち、燭をとって寝についたが、心中こわくないわけはなかった。三更になっても目が冴えて眠れない。
突如、神座の下で豁然たる音がして、何物かが躍り出た。
羊商人は蝋燭の光でこれを見た。
それは体長七、八尺、頭面は人の形をそなえ、両眼は漆黒ながら光を放ち、クルミほどの大きさである。
首より下は体じゅう緑の毛で覆われふさふさとして蓑衣のよう。
それが羊商人に向かって睨みかつ匂いを嗅ぐのであった。
以前、「糊をなめる子羊」をご紹介している、袁枚の怪談集『子不語』から、「廟中の怪」を。
お話では、羊商人は逃げきったんですが羊千頭がどうなったのか書いてないのです。気になる。
袁枚は、「随園食単」もご紹介しています。ご参考にぜひ。
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