椎名誠 「草の海―モンゴル奥地への旅」

羊鍋はまず食べる羊を選ぶところからはじまる。
羊を飼っている牧民だからあたりは羊だらけである。
アユーシが一匹を選んだ。選定基準は一番近くにいたから、のようだ。
プロレスのヘッドロックのようにしてゲルの裏の草はらに連れてくる。
前肢と頭を腕でかかえ込むと、羊は人間の進む方向へ自分の肢で歩く。
そうするしかほかにやることがないからである。

椎名誠のモンゴル大草原紀行、「草の海」です。「肉の中で羊が一番好き」(本文より)という椎名氏が、訪れた先で受けた歓待を描く一章から。

ひつじ話

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