江戸期の羅紗の陣羽織
陣羽織は、戦国時代に生まれ、桃山時代を経て江戸時代末期に至るまで、武家が常備しておくべきものとして、刀や甲冑とともに常に用意されていたものでした。
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江戸時代中期から後期にかけての作品と考えられる陣羽織に用いられている生地は、表地には毛織物が用いられ、このうち羅紗が最も多く、呉絽がこれに次ぎ、ヘルヘトワンがさらにそれに次ぎます。
またフェルト(獣毛を踏みつけ絡み合わせて布状にしたもの)も多くはありませんが含まれています。
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フェルトも含めてこれらの羊毛製品は、木綿製のオランダ更紗とともに、長崎のオランダ商館を通じて輸入されていたと考えられます。
長崎奉行所管理のオランダからの輸入裂の見本帳には、これらの陣羽織に使用されているものに類似する羊毛製品やオランダ更紗が貼り込まれているからです。
先日の「日本幽囚記」や平賀源内の事業などでお話している江戸中後期の羅紗に関して。動物の羊には無関心なのに羊毛製品には興味があるという状況は、こうして生まれたもののようです。
引用の陣羽織は、19世紀の「緋羅紗地丸紋付陣羽織」。緋色は戦国時代以来好まれ続けた人気色です。
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